街中の隠れ家的博物館 Musée de la Vie romantique
ビジネスや商業の中心街でもあるパリ9区の喧騒を逃れ、シャピタル通りrue Chaptalから石畳の通路を抜けると、ジヴェルニーのモネの家を想起させるグリーンの雨戸の一軒家がある。王政復興時代、独特のイタリア式の屋根に葡萄や藤の棚が見られる館はオランダ出身のロマン主義画家、アリ・シェフェールAry Schefferが晩年を過ごしたアトリエ住居だ。
1821年のギリシャ独立戦争の突発はフランスにもギリシャブームを巻き起こした。
19世紀初頭に分譲されるまでは、畑や果樹園のど真ん中にキャバレーや大衆レストランが立ち並んだこの地区。ジャーナリスト、デュロ・ド・ラ・マルDureau de la Malleは『ヌーベル・アテネNouvelle Athènes』と名付けた。ギリシャ芸術にインスパイヤーされた、古代建築に内蔵する美を探求する新古典主義建築の建物が立ち並んだことに、新しいアテネを意するヌーベル・アテネは由来する。今日でも、トゥール・デ・ダム通りrue de la Tour-des-Damesなどに当時の建造物が見られる。1820〜50年代に建てられたこれらの建築群は多くの芸術家を魅了し、パリのロマン派運動の地となる。
1811年にパリにやってきたシェフェールも、ヌーベル・アテネに魅せられて、1830年に家族とともにシャピタル通りの7番地(現在は16番地)に移り住む。シェフェール同様、新古典派主義の画家ゲランGuérinに師事した、ロマン主義を代表する巨匠、ウジェーヌ・ドラクロワEugène Delacroixも近所のノートル・ダム・ド・ロレット通りrue Notre-Dame-de-Loretteで1844〜1857年を過ごしている。
シェフェールは住居の両脇にアトリエを建て、一つは製作用に、もう一つは他の芸術家を招き入れるサロンとして利用した。このアトリエ-サロンにて30年の間、政治的ディベートは勿論、文学、芸術運動が展開されたのだ。ご近所のドラクロワをはじめ、当時のパリの芸術家はみな、このアトリエに集まり、各々の作品を発表したと言われる。初期のフェミニストとしても知られる作家ジョルジュ・サンドGeorge SandもショパンChopinやリストLisztと共にここに集った。
1956年に国家に寄贈されてから、音と色の研究を行う大学の研究室となるが、1980年に画家の住居という歴史を担う文化会館へと変身する。1981年には『ルナン-シェフェール博物館Musée Renan-Scheffer』の名の下に、カルナヴァレ博物館の別館となり、パリ市の管轄下に。1984年に開催された展覧会をきっかけに、コレクションと呼ばれる芸術品はないが、建物自身の価値とジョルジュ・サンドの孫娘によって寄贈された思い出の品を展示する、今日のロマン主義博物館Musée de la Vie romantiqueとなった。
ルーヴル美術館に所蔵されるドラクロワの代表作、『民衆を導く自由の女神La Liberté guidant le peuple(1830年)』のような傑作はここにはない。ロマン主義時代の内装を復元した館には、あまり知られていない、彼の小さな水彩画やデッサンが所狭しと壁を埋めている。
ガラスの陳列ケースにはサンドの指輪や彫刻刀などの思い出の品。面白い物ではショパンの石膏の腕。こんなに小さな手でピアノを弾いていたんだ、と思わず大きさを比べてしまう。
シェフェールの作品はオランダのドルドレヒト美術館musée de Dordrechtに寄贈されたが、当博物館では少しずつ収集を図っている。
ノスタルジックな館内で、当時の芸術家達の息づかいに耳を傾けたい。
また、当時のアトリエ-サロンではロマン主義の企画展が常時催されているので、是非チェックしたい。
四季の花が咲き乱れるテラスでは4〜10月までレ・ケーク・ド・ベルトロンLes Cakes de Bertrandのサロン・ド・テが楽しめる。
Musée de la Vie romantique【パリ市立ロマン主義博物館】
シェフェール-ルナン館 Hôtel Scheffer-Renan
16 rue Chaptal 75009 Paris
メトロ : 12番線Saint-Georges, 2番線Pigalle
TEL : 01 55 31 95 67
開館時間 : 10:00〜18:00
閉館日 : 月、祝日
入館料 : 無料(企画展は有料)
www.vie-romantique.paris.fr/
by aki on 2007-09-24 [美術館・博物館]
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