マルセイユの中心街から崖と入り江が有名なカランクに行く21番のバスに乗ると、進行方向右側に見られるのが、ユニテ・ダビタシオンUnité d’Habitation。近代建築好きには見逃せない、スイス出身の近代建築の巨匠、ル・コルビュジエの代表的な建築物の一つだ。
パリで鉄筋コンクリートのパイオニア、オギュスト・ペレらに従事し、近代建築の道を究めたル・コルビュジエ。1914年には当時、石積みがメインの西洋建築に於いて、鉄筋コンクリートと柱で構造を支える住宅構造、ドミノシステムを掲げた。彼の建築家人生の大きな地位を占めたのは都市の集合住宅プロジェクト。第二次世界大戦後の復興計画に中で、彼が提示したのが革新的でありアバンギャルドなプロジェクトこそが、ユニテ・ダビタシオンなのだ。
1945年に着工され、完成したのは1952年と7年余りの工事。当初の予算を3倍オーバーしたと言われる試行錯誤の実験的な建設。このユニテを皮切りに、輝く都市、シテ・ラデューズCité radieuseと呼ばれるこのモデルは、フランスではナント市近郊のロゼ、フィルミニー、ブリエ・アン・フォレ、そしてベルリンにも建設された。マルセイユのユニテが一番有名なのは、予算をオーバーしただけあって、建築家の厳格な主張が最大限に取り入れられているからだ。
近代技術の導入によって、無駄を省き、日常に於ける各々の住人のプライベートと共同生活空間のバランスを取る、という集合住宅がユニテ・ダビタシオンの思念。
都市空間を垂直方向に設計したこの建築は、地階は打ち放しのコンクリートは柱が並ぶピロティ、最上階にはプールや野外ステージを備えた屋上庭園。そして、この建物の中だけでも日常の生活ができるようにと、店舗や郵便局、保育所などを備えた。
ヨーロッパでの伝統建築にも見いだされる最適な居住空間として人体寸法183cmがある。へその高さを113cmをすると、比率は1.619という黄金比率にかなり近い数値が割り出される。ル・コルビュジエはこの人体の寸法と黄金比から編み出した建造物の基準寸法を、フランス語のモデュールmodule(寸法)とノンブル・ドールnombre d’0r(黄金比)を組み合わせた『モデュロールModulor』と称して打ち出した。この基準に基づいた建築を代表するのが、ユニテ・ダビタシオン。ピロティーの壁にはこのモデュロールの寸法体系が刻まれている。
モデュロールの採用により、鉄筋コンクリートの骨組みに、人間の生活空間として最適化されたスペースをプレハブで構成。建物には、1〜10人に対応する23種類の337住戸がある。代表的なのがメゾネットの4人用のアパート。メゾネットの下のが西向きなら、上は東と、地中海を見渡し且つ反対側にはマルセイユの町が見渡せるという。
湿気があり日射が少ない地階を省いた『ピロティ』、従来の屋根を省き日光を浴びるスペースとなった『屋上庭園』、鉄筋コンクリートの採用により建築部を支える縦断壁が不要となった『自由な平面』、同じく窓マグサが不要となったために実現した『連続窓』、構造から自立した『自由なファサード』というのが、ル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレが提唱した近代建築の五原則。この法則はブーローニュ・ビーランクールのクック邸で取り入れられ、さらにポワシーのサヴォア邸の建築でさらに完成度が高められた。
マルセイユのユニテがル・コルビュジエの集大成とされるのは、前記のさまざま建築理論が実践されているからだと言える。そんな近代建築の先駆けとなったユニテも、今日では高層住宅に囲まれ、バスから見るだけでは一見、他の建築物にまぎれてしまうかもしれない。建設当時から問題の多かった配管など、今でも工事が多く、訪問時にはピロティー、屋上庭園を含め、至る所で工事が施行され、ちょっと寂れた感じ。また、ル・コルビュジエが夢見た、都市空間が凝縮されたユニテも、店舗は小さなパン屋さん、ギャラリー、書店に留まり、レストランもランチが45ユーロと日常からかなりかけ離れてしまっている。それでも、ル・コルビュジエを愛する住人達はアソシエーションを結成し、映画上映等の文化活動を行ったり、と建築家の意志を継いで、ユニテのコミュニティーの活性化に勤めている。
現在、工事中の屋上庭園が見られなかったのはとても残念だが、ユニテの一般訪問は入り口の管理人に一言声をかけ、通常は屋上庭園、3階の店舗スペースを自由に散策できることになっている。アパート内を見学したい場合は、金曜の午後に企画されているツアーにマルセイユの観光局で要予約だ。
一見寂れた今日のユニテだが、それでも建築ファンにとっては、ル・コルビュジエの傑作に住めるなんて夢のような話。と、ネットで検索してみましたら、お値段は100m2のメゾネットで31万ユーロ〜。周囲の集合住宅に比べると割高ですが、それでもマルセイユに住むなら、是非検討したいところ。また、短期間でも過ごしたいというのであれば、ユニテ内にはホテルも。最小住居単位のコンパクトな部屋ですが、お値段は65ユーロ〜とお手頃な設定に。
また、パリの建築・遺産博物館のフランス近現代建築のコーナーでも、マルセイユのユニテ・ダビタシオンのユニットを実寸スケールで体感できる。
Marseille【マルセイユ】
パリからのアクセス : Gare de LyonよりGare Saint-CharlesまでTGVにて3時間
Cité Radieuse【マルセイユのユニテ・ダビタシオン】
280, Bd Michelet 13008 Marseille
アクセス : Gare Saint-Charlesからメトロ2番線にてRond Point du Prado下車。バス21番、22番にてLe Corbusier下車。
http://www.marseille-citeradieuse.org/
Hôtel Le Corbusier【ホテル・ル・コルビュジエ】
TEL : 04 91 16 78 00
http://www.hotellecorbusier.com/
Office du Tourisme de Marseille【マルセイユの観光局】
4, la canebière 13001 Marseille
TEL: 04 91 13 89 00
http://www.marseille-tourisme.com/





















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