娯楽から悪夢へのデカダンス Superdome
1975年にアメリカンフットボールのスタジアムとして米国・ニューオーリンズに建設されたルイジアナ・スーパードーム。スーパーボールというと、跳ね返りが大きいゴム製のボールの玩具を思い浮かべるが、米国では国技と言えるアメフトのプロリーグ決勝戦という、スポーツの大イベント。そんなスーパーボウルの華々しい試合会場としてだけではなく、ローリング・ストーンズのコンサートや264代ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世を迎え入れた多目的ドームがスーパードームなのである。そんなスーパードームも、華やかさとは一転して、2005年にはハリケーン・カトリーナによって被害を被り、市内の浸水の間は仮設住宅とも化する。最大の娯楽の場、そして災害時の避難所としてのパラドックスな変身。
そんな『スーパードーム』をタイトルに掲げ、パレ・ド・トーキョーで先月末から5人のアーチスト展が開催されている。
ファビアン・ジロウFabien Giraudとラファエル・シボニRaphaël SiboniのユニットによるLast Manoeuvres in the Dark。闇の最終作戦行動とでも訳そう。マイクロプロセッサーが搭載されたスター・ウォーズのダースベイダーの頭部、300台が三角形を形成している。各頭部はケーブルで結合され、中央のシステムへと導かれ、暗い闇のサウンドを奏でるのだ。説明文のリフェランスに兵馬俑が出てくるのだが、顔が全て違うという兵馬俑のテラコッタとは似つかわしくないが、無機質に見える頭部はテラコッタに黒のエナメル加工してあるらしい。見上げる高さに設定されたダースベイダーは、黒光りしながら前方を凝視している。ダースベイダーはミッキーマウスみたいなもの、とそれらにマスコット的なシンボルを見いだし、いわば悪の代名詞によるレクレイム、というわけだ。
イタリア人アーチストのアルカンジェロ・サソリーノArcangelo Sassolinoはバッティングセンターを想起させるインスタレーションAfasia 1。柵で囲まれた中に、ビール瓶を投げる大掛かりなマシーンが設置されている。窒素を使って時速600Kmで発射する緑のビール瓶は、ものすごい音を立てて黒い壁にぶち当たり、栓はへなっと変形し、瓶は木っ端微塵に散乱する。空っぽのビール瓶というところに、大衆的な飲み会、スポーツ観戦のヤジなどポピュラーな断面が読み取れるわけだ。弾丸となる瓶がマシーンの内部に投入されてから、発射するまでの緊迫した時間。そして爆発音。パリでは近年、大きなテロ行為は行われていないが、テロリズム的な恐怖感にあっという間に包まれてしまう。事件が起きると、緊迫するのが常だが、時間が経つと日常へと紛れていく。そんな恐怖を彷彿させる怖いマシーンが、Afasia 1だ。
ダニエル・フィルマンDaniel Firmanは地球から18000kmというサブタイトルを掲げ、鼻で立つ像、ワルサWürsa。実物大の像の逆さまポジションに不安定な恐怖感を覚えるが、今日は怖いものだらけだったので、象はやはり愛らしい。円周2484kmの星ではワルサはこの格好を実現できるとのこと。
その他、お向えのパリ市立近代美術館でも同時に企画展を催しているJonathan Monk、今回工事中で残念ながら見られなかったChristoph Büchelの5人の作品によって、スーパードームが構成されている。
娯楽が悪夢に転じたスーパードーム。暑い夏の肝試しにいかがだろうか。
SUPERDOME【スーパードーム】
2008年5月29日〜8月24日
Daniel Firman “Würsa (à 18 000 Km de la terre)”
Christoph Büchel “Dump”
Arcangelo Sassolino “Afasia 1″
Fabien Giraud et Raphaël Siboni “Last Manoeuvres in the Dark”
Jonathan Monk, “Time Between Spaces”
Palais de Tokyo / site de création contemporaine【パレ・ド・トーキョー】
13, avenue du Président Wilson à PARIS
メトロ : 9番線Iéna
開館時間 : 12:00〜24:00
閉館日 : 月、1月1日、5月1日、12月25日
入場料 : 6ユーロ、割引4,5ユーロ(60才以上、26才以下)
http://www.palaisdetokyo.com/
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