人体とテクノロジーのハイブリダイゼーション(複合体の形成)のパイオニアと呼ばれるオーストラリアのアーチスト、ステラークの展覧会がパリ近郊のアンギャン・レ・バン市のアートセンターで開催されている。
ロボットの開発や舞踏に取り組んだという20年の日本滞在を経て、今日はヨーロッパを拠点に活動を展開。
ステラークの作品は身体、特に自らの体をメディアとし、デバイスを装着することによって拡張する機能。まさしく、日常、我々がPCにデジカメをつないだり、メモリーを積んだりといった行為を人体に施すのだ。6本足、3本腕、そして3つ目の耳など自分の肉体をレゴのように増大させるボディアート。一見、科学博覧会のようなこの展覧会は、ステラークの人体への挑戦、そしてテクノロジーと人類の未来を示唆するレトロスペクティーブだ。
会場のスタートラインで出迎えてくれるのは、作家の頭部の3Dアバター『プロスセシック・ヘッド』。手前のキーボードに質問を入力することによって、会話ができる知的エージェントで、口だけでなく、目や顔の筋肉までもを巧みに動かし、話す。センサーによってユーザが目の前にたったことを感知し、衣類の色を読み取れるそうだ。
『プロスセシック・ヘッド』はアフォリズムや哲学なども組み込まれていて、かなり高度な会話ができるらしいが、英語で質問し、口頭で返事をしてくれるため、あまり返答内容が聞き取れなかったのが残念。ただ、大統領は誰?と聞くと、ジョージ・W・ブッシュということで、アップデートはされてないよう。
ステラークが目指したのはもちろん、優れた会話エージェントの開発という訳でなく、彼自信が『プロスセシック・ヘッド』に向き合って対話する拡張としての2つ目の頭なのだ。
蜘蛛の足のような巨大なマシーン『エグゾスケルトン』は6本足への拡張。コントローラーを操縦するのではなく、腕の動作に呼応して動くのだ。歩くときに右足を前にだせば自然に左腕がでる、といった操縦ではなく、まさしく自らの足の延長線に位置付くデバイスだ。
人体の拡張といった、奇妙な方向へ彼を導いたのは、原点ともなるパフォーマンス、宙吊りだ。皮膚に埋め込んだ金具でニューヨークの空を舞う、など世界各地で行われた有名なパフォーマンスである。風のざわめきと皮膚の悲鳴が聞こえたというだけあって、ビデオで見ているだけで、痛そうで目を背けたくなる。さすがに人体のリミットを感じた彼は、この限界から拡張デバイス、ボディー・インターフェースと次のステップへ導かれることになったのだ。
会場では、そんなデバイスらのデモンストレーションが実物又はビデオで見られる訳だが、最近世間を騒がせたのは『第三の耳』。左腕に人工的に形成した耳だ。手術の模様がビデオで放映されているこの耳だが、いずれはマイクを埋め込む予定らしい。
携帯電話を持ち歩くのが当たり前となり、猫にマイクロチップを埋め込むようになった今日、そう思うと『第三の耳』はそれほどショッキングなニュースでもないのかもしれない。
新技術の著しい発展に誰もが覚える不安を浮き彫りにし、人体とテクノロジーの相互関係、テクノロジーによって進化する人間の本質を問う。今世紀の様々な疑問が投げかけられる展覧会だ。
尚、フランスで初めてのステラークのレトロスペクティーブとなる本展は市内で6月5日〜13日に開催されるデジタルアートフェスティバル、『バン・ヌーメリックBains Numériques』の一環となっている。
Stelarc : Les mécaniques du corps【ステラーク・人体のメカニック展】
会期 : 2009年4月10日~6月28日11:00~19:00、土14:00~19:00、日14:00~18:00
会場 : Centre d’art d’Enghien-les-Bains, 12-16 rue de la libération 95800 Enghien-les-Bains
入場無料
アクセス : パリの北駅Gare du NordからValmondois又はPontoise行きの電車で15分
http://www.cda95.fr/


















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