シャンゼリゼ大通りから程近いパリ8区の裏通り。真っ赤なファザードがひときわ目立つ素敵なレストランがあります。ここは日本人シェフ、青木誠さんとお姉さんの三代子さんが経営されているレストラン、「Makoto Aoki」。2006年のオープン以来、地元のパリジャン達にも高い評価を得ています。ご実家は東京・銀座にある老舗・鮨青木。現在はお兄さんが店を守られておりミシュラン1つ星を保持する由緒正しき暖簾をお持ちなのです。大女将である母のもと、美味しいものをお客様に食べてもらうということを小さな頃から側で感じながら育ったお二人には、今もそのエスプリがごく当たり前な日常の事としてしみついているのです。だからこそ、お二人の料理や経営に対する想いというのは沢山の情熱が注がれ、又言葉の節々に心からの愛を感じます。
東京帝国ホテルや、銀座で有名なフレンチレストラン「ロオジエ L’OSIER」ご出身の青木シェフ。ロオジエにおかれては、ジャック・ボリーシェフ(Jacques Borie)との日々は現在の青木シェフにはなくてはならぬ貴重な時間だったとおっしゃいます。その後ドイツのレストランを経、パリではかつての「ルカ・キャルトンLucas Carton」、現「サンドランスSenderens」やテラスの美しいことでも有名な「パレ・ロワイヤルPalais Royal」などの他数々のレストランで修業を積まれました。又お姉さんの三代子さんも、もともと料理人で南仏の高級ホテル「ウストー・ドゥ・ボーマニエールOustau de Baumaniere」やパリでは「パレ・ロワイヤル」に「ラ・レガラードLa régalade」、「アナクレオン Anacréon」など名立たる所で腕を振るわれたお方。又、三代子さんの旦那様パトリック氏は「パレ・ロワイヤル」のシェフでもあられ、代々揃ってガストロノミーなご家族なのです。そんなお二人がドイツで働いていた頃のオーナーさんと共にパリ12区に「レストラン・オ・ルヴェル Restaurant O Rebelle」を共同経営にてオープンすることとなったのが2001年。その後2006年、ついにこの「Restaurant Makoto Aoki」を二人で独立オープンする事となったのです。
お昼時の店内は近隣の常連客で満席。今やランチは予約必須です。アラカルト1品の為でも席につくお客さんもいる程。もう一度食べたいとその舌にしっかりと記憶されているのです。明るい店内は鮮やかな赤色で統一。壁にはお店の雰囲気にぴったり馴染んだ絵画が溶け込んでいます。椅子もゆったりと座るに十分なソファタイプ。壁際も全てソファというのも嬉しい心遣い。青木シェフの情熱一杯のお料理、奥のキッチンからの香りを楽しみながら待つことにしましょう。サービスは三代子さんが担当なので日本語でも大丈夫。メニューには日本語訳が付いています。
お昼はランチメニューもあるのですが、この日はアラカルトで頂くことにしました。まずはアミューズにお野菜具だくさんのスープ、可愛いココットでたっぷりと。旬の素材をふんだんに使ったその具からはそれぞれの旨みと甘みがたっぷり出てており、薄くスライスしたパン・グリエがそのジュをしっかり吸いこんでいます。深みのある味にも透明感があって野菜の甘みが後を追いかけ、最後にまろやかなオリーブオイルの香りが鼻を抜ける。綺麗に切りそろえられたお野菜からも仕込みの丁寧さを感じます。フランス料理人が作るスープこそがこれ、なのです。
前菜は先ず、本日のお勧めから「アスパラガスのサラダ・プロヴァンス風 Salade d’Asperge Vertes Provence, Mousseline d’oignon , Vinaigrette d’oeufs de hateng Plat (20ユーロ)」
テーブルに運ばれるとその美しさに溜息。春をたっぷり感じるこの前菜はアスパラガスとトマトの甘み、パセリの苦み、ヴィネグレットの酸味と塩分、そして全体を包むオイルの丸みが口で見事に一つになって広がります。素材の鮮度と旨みを極限に引き出してひと口で頂く、そのバランスが絶妙で後引きます。さっぱりしながらもコクを感じられる前菜は白ワインが進みそう。
もう一品はスペシャリテでもある温かい前菜、「モリーユ茸のブリオッシュトースト Brioche aux morilles (20ユーロ)」。テーブルに置かれた瞬間にふわっと香りが立つお皿。厚いブリオッシュは自家製。しっかり焼き上げられているけれど中は見事にふかふかでバターたっぷり卵たっぷりの黄色。キメが細かくしっとりとした層が広がりながら優しく伸びる感じです。上にはモリーユの旨みがしっかり移された香り高いクリームソース。それぞれのアクセントと共に全てが計算しつくされた1品。ブリオッシュがソースをしっかり吸いこんでバターの風味と融合。一気に完食です。
メインが待ち遠しいのは周りの皆さんの顔を見ていて一目瞭然だから。絶対美味しいものが出てくる、という安心感が時を包みます。そして人気メニュー、リゾット。日替わりで色々なものが楽しめます。これを目当てに来られるお客さんも沢山おられます。今日は「的鯛のリゾット Risotte de Saint-Pierre(36ユーロ)」。アラ・ミニットで仕上げられるシェフのリゾットはリゾットだけでなく具もたっぷりであること。これも置かれた瞬間に芳しさがテーブルに広がり、パルメザンの香りも鼻腔を突き抜けます。皮目がパリっと焼かれた的鯛は身もしっとり柔らかい。抜群のねっとり感で仕上げられたリゾットは濃厚。でも透き通る優しさがあるのです。アスパラも盛り込まれたサラダが添えられ丁寧に縁どられたソースが囲みます。
そしてもう一皿は「シャラン産雌仔鴨のロティ・赤ワインソース Canette de CHALLANS Rotie, Pommes Verts, Sauce Vin Rouge (38ユーロ)」。まずは同じく赤ワインのソースのアロマがふわり。どれもこれもまるで生きているかのような躍動感溢れる香りと輝きなのです。艶やかなソースはツヤツヤで透明感のあるもの。見事なロゼのお肉はナイフを入れるとしっとりとした柔らかさ。大きなポーションと縦カットでサーブされることで口に含むと食感もふくよか、噛みしめるごとに旨みを感じます。これこそがお肉を美味しく頂く為のサーブ。パリっと香ばしい皮目に粗めの黒コショウと岩塩。濃縮された赤ワインソースは驚くほどにクリアでとても香り高い、とお伝えしたい。付け合わせはりんご。綺麗に面取りされたりんごは中にしゃきっと食感を残す火入れで、この甘みと酸味が鴨にぴったり。全てに拘りとプライドが感じられる本当に心から美味しいお料理でした。
お待ちかねのデセールは「タルトタタン Tarte Tatin tiède, glace au lait salé (14ユーロ)*要10分」(季節のデセールですので春先はメニュー替えとなっているかもしれませんのであしからず)。薄いスライス重ね仕込みのタタン。ほんのり温かく、非常に柔らかいテクスチャーでねっとりと口の中にまとわりポタポタと溶けていきます。対照的にしっかりサクサクのパイ生地がコントラストとなっており砂糖のキャラメリゼがほんのり香ばしさと共に後押し。添えられたシャンティ、そしてもう一つのクネル(左奥)は何とミルクの塩アイス!ミルキーでピュアなミルクはさっぱりとしていて、でもコクがあってタタンにぴったり。そしてほんのり感じる塩味が何とも言えぬ美味しさなのです。上にもパラリ岩塩がかけられておりコントラストを楽しめます。
もう1品は人気デセール、「ババ・オ・ラム Baba au rhum (10ユーロ)」。手作りババ用ブリオッシュはご覧の通りまるでスポンジのごとく気泡が細やか!シロップとラムをしっかり含み込んだ生地は口に運ぶとすっと溶けてなくなるのですから。じゅわっと広がる甘みとお酒、そしてバターの香りのマリアージュ。久しぶりに美味しいババを頂きました。シャンティを添えなくともそのまま十分美味しく頂ける、そんな究極のババ、お勧めです。心もお腹も満たされる食事というのは至福の一時。リピートされる常連のお客様の気持ちがわかります。時間はかかるけれど美味しいものを作るには、と早朝から仕込みに入っているシェフ。その結果がみんなを笑顔にしてくれます。
これまでに一番影響を受けられたシェフは?との問いに、「やはりジャック・ボリー氏ですが、その時々に出会ったシェフ、そして先輩、後輩、友人、関わった全ての人に、その時代を過ごした自分と、その年齢であったそれぞれの自分に影響を受け、又常に刺激を受け多くの事を学びました。僕にはクリエィティブなことはできないから、自分が知っていることしかできないんです。今まで吸収したものや教えて頂いたベースに忠実に今自分が持っているものに足したり引いたり、いつも足し算と引き算で料理を作っているだけです。」と青木シェフ。フランス料理というクラッシックなベースを常に尊重し、今日は何を食べて頂いたのかがはっきりとわかってもらえるようなお料理を提供したい。どれだけ量が多くなろうとも、お魚は切り刻まずに大きな身のまま、お肉は大きな塊で骨付きで焼くこと。こうやって食べるのが一番美味しいんだということをお皿の上で表現したい。シェフの料理への想いと美味しいものへの情熱は真っ直ぐでその瞳は凛としていたのがとても印象的でした。「勿論残して頂いてもいいんです。美味しいものを食べて頂ければそれでいいんです。」とシェフ。確かにMakoto Aokiのお料理はポーションもしっかり。
例えここが日本でなくフランスであろうと、世界共通どんな方にも、どんなお客様層の方にも美味しいものを食べてもらえ喜んでもらえたら。自分がやりたい事ができれば場所などは関係ない。みんなが食べられるフランス料理をプロが作ればどのようなものになるのか、というところに情熱を傾けているのです。日頃食べているものでもプロの料理人が作ればこれほど美味しくなるのだ、という意識を忘れずにキッチンに向かうこと。常に自分に厳しく、そしてこれまでの経験と吸収したことを大切に今日、明日へ真摯に傾ける直球。「ただ、この地でレストランをする事となった運命には、以前共同経営をしたオーナーとの出会いがあったから。彼女との出会いにとても感謝しています。本当に沢山の事を教えて頂きました。」と語るシェフはやはり人に対する愛情が人一倍厚い方だということを強く感じさせられます。周りのみんなの協力があったから僕は今ここで料理を作れているんです、と話すシェフ。
彼のお皿はどれもみな、その人柄のようにキラキラと輝きイキイキしているということ。そして素材の香りが鼻にしっかり伝わるものばかり。これこそがフランス料理と感じる、食べたものの記憶は真っ直ぐ伝わってきます。彼のかける情熱で正に素材が美をまとい尚洗練されてお皿の上で披露される、そんな気がします。これ程に手掛けられたなら素材達もきっと本望でしょう。シェフの想いを知り尽くしているお姉さんだからこその二人三脚、息ぴったりで今日も美味しいお皿が運ばれます。
記憶に残る鮮明な料理。青木シェフのフランス料理はきっとあなたの舌が忘れないはず。
Makoto Aoki【マコト・アオキ】
19 rue Jean Mermoz 75008 Paris
Tel : 01 43 59 29 24
営業時間: 12:00~14:30 / 19:30~22:30
定休日 土の昼・日・祝日
メトロ ①⑨番線Franklin D.Roosevelt
ランチメニュー Formule 21,50ユーロ (前菜+メイン 又は メイン+デセール)
その他本日のお勧め、アラカルトメニュー有り
































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