先日ご紹介しましたバスク地方はSaint-Pée sur Nivelle の丘に佇むオーベルジュ「L’Auberge Basque」。行き届いたサービスと心地よい内装が快適な客室はもちろん、丘からの眺望と共にこちらで頂くディナーもまた最高の一時なのです。この度1ツ星を獲得した「Restaurant L’Auberge Basque」。
オーナーシェフであるセドリック・ベシャド氏(Cédric Béchade)。32歳という若さでありながら2年前の2006年にこの物件を買い上げ、翌年2007年に素晴らしいオーベルジュレストランとしてオープンさせました。リモージュ地方出身、18歳でキュイジニエとしてフランス料理界に入った彼。最初に働き始めたのはここバスク地方・ビアリッツ(Biarritz)にあるホテル・ドュ・パレ(Hôtel du Palais)でした。1年半を過ぎた頃パリに上った彼はクリヨンホテル(Hôtel de Crillon)に勤務。その後アラン・デュカス氏(Alain Ducasse)の3ツ星レストラン「59ポワンカレ(59 Poincaré)」へ移ります。後キュイジニエとして未来の階段を駆け上がる中、ここで1年間エリゼ宮の料理人を務めあげます。そしてその後パリを代表するべくデュカス氏のホテル・プラザ・アテネ(Hôtel Plaza Athénée)へ。ジャン・フランソワ・ピエージュ(Jean François Piège)シェフ率いる夏季限定レストラン「クール・ジャルダン Cour Jardin」のシェフに着任。彼のキュイジニエ人生の大半をアラン・デュカスグループで過ごしました。
現代フランス料理を率先するべく大シェフ、デュカス氏とピエージュ氏のもとで経験を積んだセドリックさんの料理は、彼らのエスプリをたっぷり吸収したクラッシックフレンチの進化版。基本のフランス料理を現代的にアレンジし、尚且つ美味しさと美しさを兼ね備えた作品となって皿の上に描かれるもの。そしてこの地にオープンさせた大きな理由でもあったバスク地方の食材を使用すること。
フランスの伝統とバスクの伝統を融合させ、クラッシックとモダンを併せ持った料理となって日々お客様の目を驚かせ舌をうならせているのです。このキッチンでスーシェフを担っているのがクール・ジャルダン時代から彼の右腕として支えてきたローラ・チャベ・パス・カステック(Laura Chavez Paz Castex)さん。笑顔がとってもキュートで瞬発力と柔軟さを兼ね備えた知的な彼女がセドリックさんを支え、キッチンに立っています。
食材は主にBIOを意識し、又この地の生産者やアルティザンのものを積極的に使用されているのだそうです。
13mもの大きなガラス扉が一面に広がるレストランは丘から望む景色が時間と共に表情を変え本当に綺麗。店内の中央はオープンキッチンになっており躍動感あふれる音が聞こえてきます。バスクのトレードマーク、赤いバンダナを頭に巻いたキュイジニエさん達が一生懸命動く姿も見られます。ここで日本人スタッフとして働いておられたのが谷村忠志さん。彼は1年間の任務を終えこの夏卒業されてしまったのですが、ここでの経験はとても刺激的で素晴らしいものだったと話して下さいました。本当に家族のように優しく、いつも楽しく料理に向かう仲間達の中で働くことは苦も苦に思わぬ楽しい日々だったとおっしゃいます。みんな料理をすることが大好きで働くことが本当に好きな人達ばかりだった、とのことです。セドリックシェフの想いがスタッフみんなに充満しているのがよくわかりますね。キッチンも最新設備がなされ、又バスクらしいプランチャも完備。動きやすい動線作りが計算されたキッチンは様々な所で働いてきたセドリックさんならではの究極の城。とにかくピカピカに磨かれており清潔感溢れるキッチン、そしてここからも外を眺めればカウンターの向こう、ガラス扉越しに絶景が望めるのです。働く人にも目の癒し、やはりここはオーベルジュ!
そして彼と共にこのオーベルジュになくてはならぬ存在がソムリエのサミュエル・アンジェラール氏(Samuel Ingelaere)。古き友でもあるサミュエルさんは当時ムジェーヴ(Megève)にあるマルク・ヴェラ(Marc Veyrat)などで活躍するなど数々の経歴を持つ腕利きのソムリエさん。2005年にはゴーミヨーにてフランス最高ソムリエに指名されています。セドリックさんのオーべルジュ計画に賛同し、ディレクター・ソムリエとして就任。彼がセレクトするワインリストは南西ワインにとどまらず、フランス全土から常に飲み頃で尚且つ新しい発見のあるリストが取り揃えられています。美味しいワインもスタンバイ、これで準備は万端です。
さぁ、そんな彼のお料理。夕日が沈みゆく景色を前にテーブルに着席したらまずはアペリティフ。オーク材のテーブルの上にもバスク地方で活躍する職人さん達の数々が散りばめられていました。ジャン=ピエール・ラニョー(Jean-Pierre Lagneau)のグラスとカラフ、バスクでは最も歴史ある織工・オナ・ティス(Ona Tiss)のナフキン、ベルナルドー(Bernardaud)の陶器、そして敷き皿として置かれているのはジョエル・カゾー(Joël Cazaux)のセラミック皿。カトラリーはクリストフル(Christofle)。バスクを愛する彼ならではの拘りが最高のディナーを準備してくれています。
この日はデギュスタスィオンコース「Menu Dégustation(86ユーロ)」をいただきました。スタイリッシュなパニエで運ばれてきたのはアルティザンBénat Darriguesさんの天然酵母のBIOパン。まずはアミューズにレモンクリームが詰められたアンショワのグジェールにチョリソーとパルメザンのサブレを。丁寧に手が込まれた小さなひと口、とっても美味しい。そして続いて鯖のリエット。脂ののった身は丁寧にほぐされ何とも言えぬ美味しさ。シトロンコンフィにセロリが混ぜ込まれていて舌を刺激すると同時に上に乗ったバジルが香りを添える。バスク料理にはなくてはならぬピーマン・エスプレットはアルティザンVincent Darrichonのものなのだそう。
前菜は4種のトマトにフロマージュのアイス。甘いトマトは4種それぞれに異なった味わい。繊細な甘みと酸味を味のしっかり付いたトマトソースとジュレに絡め、尚且つしょっぱいフロマージュのアイスと一緒に頂く。トマトを乾燥させたプードルにセロリでアクセント。全部を一緒に口に運べばこのマリアージュがトマトの旨みを予想以上に引き立ててくれることを実感するのです。トマト尽くしの一皿、美味しい!そして次はフォアグラとアリコ・ベールのお皿。甘いパート・ダマンドに包み込まれたフォアグラはピュアで上質なお味。アーモンドグリエに甘く煮詰めたエシャロットを絡めて頂きます。丁寧に処理されたアリコ・ベールの下にはグリオットとスリーズが。上にはフォアグラとこの地ならではのトゥーロン(パート・ダマンドのお菓子)をチュイールにしたもの。フォアグラを美味しく頂くべき、バスク地方の食材とフランス料理がコラボレートした一皿。
次はお魚料理。アンコウにカニの身が混ぜ込まれ衣をつけてソテーされた周りには、バスク近郊でとれるというカニのソースで囲まれています。緑を飾るのはオゼイユの葉。淡泊な身なのにパンチのある味わいを感じます。付け添えにはキャロット・ジョンヌ(黄人参)とセロリ・ソバージュ(野生セロリ)のスープ。魚とカニのソースに絡めながら頂くと味わいも深まります。
そしてお肉料理。しっとり柔らかい子羊は絶妙なロゼ色。間にはノアゼットの衣をまとったアンショワのフリット。両脇をノワゼットの甘いピュレで仕切った真ん中にチョリゾーのソース。付け添えにはトマト・クルジェット・アンショワのクリームが層になったミルフィーユ仕立てのフラン。フワフワでありながらフルンとした食感が不思議な一品でした。
最後はフロマージュ。折角ですからバスクのフロマージュを頂かねば。バスクと言えばオッソ・イラティ。熟成の若い「オッソ」と、程良い熟成の「オッソ・イラティ」と、熟成のきいた「イラティ」の3種をチョイス。確かに味の深みが熟成と共に変化するのがわかりました。勿論ブルビも数種ありました。そしてしめはやはりデセール。チーズケーキに苺のソルベ、フロマージュブランとミルクのアイスクリームにピスタッシュのソース。最後にふさわしい口の中が爽やかになるデセール。
最後のカフェは隣のバーで頂きました。ぐっすり眠る為にもハーブティーをチョイス。外はすっかり真っ暗に。空気はひんやりと肌に心地よく、解放感溢れるテラスも気持ちいい。
1ツ星を獲った今でも尚、レストラン、客室共にハイシーズンとローシーズン、季節を問わずいつも同じ値段で提供していきたい、とセドリックシェフ。食事を楽しみ寛ぎを感じてもらうべくオーベルジュとは、いつどんな季節であっても同じリラクゼーションと同じ満足感を提供しなければならない、そうセドリックシェフはおっしゃいます。メニューを考える要素には何を参考にされていますか?との問いに、「旅行や外食はもちろん、日々の日常と人々との会話、そしてインターナショナルなものにアンテナを張って引っ掛かったものを柔軟に取り入れていることかな?」とシェフ。オアシスのような非日常を提供してくれるこのオーベルジュレストランには日々に大切な人と人との繋がりという日常を一番大切にする、ということにあるように思われました。そんなセドリックシェフの想いがぎっしり詰まったオープンキッチンからは今日も人々を笑顔にするいい香りが漂っています。
D307 vieille route de St-Jean de Luz
64310 Helbarron / Saint-Pée-France
Tel : 05 59 51 70 00
Fax : 05 59 51 70 17
Email : contact@aubergebasque.com
HP : http://www.aubergebasque.com
定休日 : 月・火と金・土のランチと(春秋冬季) / 月・火のランチ(夏季)
Menu Découverte 43ユーロ(前菜・メイン・デセール 又は フロマージュ付 48ユーロ)
Menu Dégustation 85ユーロ
*アラカルトメニューも有り
■冬季休暇
【2009年】 11月23日~12月1日
【2010年】 6月28日~7月1日 、 11月15日~11月29日
*変更する場合もありますので事前にお確かめ下さい。
































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