話題のフェードするランドスケープ Peter Doig
パリ市立近代美術館でロンドンのテート・ブリテンとフランクフルトのシルン美術館の協力の下、ピーター・ドイグのレトロスペクティブが開催されている。

- 100 Years Ago, Huile sur toile, 240 x 360 cm 2001 ©Peter Doig
Centre Pompidou, Paris. Musée national d’art moderne
– Centre de création industrielle
4月に終了したテート・ブリテンの個展でも大きな話題となった、今、注目のアーチストだ。また、彼の作品『白いカーヌ』はサザビーズでなんと573万ポンド(当時のレートでは約14億円弱)で落札され、現役の画家の作品では最高値をつけた。
スコットランドで生まれ、カリブ海のトリニダード島やカナダで育ち、英国のアートスクールでアートを学んだドイグ。90年代までは抽象表現主義だったためか、3メートルx2メートルといった単位の巨大なキャンバスに、風景を油彩で描きだしている。抽象から具象へ、そして風景という古典的であり永遠のテーマへリターンは彼自身が育った環境、源へ戻り、探求するというところに行き着く。

- Cobourg 3+1 more, 1994
Huile sur toile, 200 x 250 cm 2001 ©Peter Doig
Provinzial Rheinland Versicherung, Düsseldorf
今回の展覧会は、彼が具象に戻った90年代初期からの作品、大作46点、小品40点で構成されており、テーマ別に見ることができる。
順々に見ていくと、感じるのはデジャビュ。今回、初めて彼の作品を見るのだが、どこかで見たことがあるような…。それもそのはず、風景画というとキャンバスを持ち出して、外で写生するイメージがあるが、彼の場合はテレビのコマーシャルや絵はがき、記念写真などにインスピレーションを得ているのだ。それによって、個々の感じ方は異なるかもしれないが、共有する記憶が蘇り、不思議な感覚を覚えてしまう。ぼんやりと霧がかかったようにフェードする彼の画風は、思い出であったり記憶であったり。
ピレネー山脈に登山したときに、大自然に囲まれた自分の小ささ、無力さを感じたことがある。大きな作品の前に立つと、目一杯に彼の世界が広がり、まさに、その大自然と人間の関係を彷彿とさせる。

- Reflection (What does your soul look like),1996
Huile sur toile, 295 x 200 cm ©Peter Doig
Collection Mima et César Reyes, Porto Rico
ドイグは『絵画は写真のように固定されていないし、不動ではない』という。
19世紀に写真が発明され、絵画は記憶を留める役割を遂げた。なぜ風景写真ではなく、風景画なのか。写真は記憶の延長線にすぎない。記憶はヴィジョンであり、音であり、匂いであり、雰囲気であり。写真を撮りまくるという日本人観光客のステレオタイプがあったが、肉眼で堪能する時間が限られた場合に記憶のフラグメントをファインダーに留め、後にそのフラグメントを頼りに記憶を蘇そうというのが記念写真。もっと主観的に欲張ってその光景を表そうというのが、絵画ではないだろうか。
『描くということは画面を進み、戸惑い、自分を見失い、自分を卓越し、広がりの上を歩き、そこで物理的に飲み込まれるままにすることなのだ。』
Peter Doig【ピータ・ドイグ展】
期間 : 2008年5月30日〜9月7日
観覧料(常設展含む) : 5ユーロ、割引3,50ユーロ
Musée d’Art moderne de la Ville de Paris【パリ市立近代美術館】
11, avenue du Président Wilson 75116 Paris
開館時間 : 10:00〜18:00、木〜22:00
閉館日 : 月
メトロ : 9番線Alma-Marceau、Iéna
無料ガイド見学 : 火曜12〜18時(8月1〜22日は14時半)、土日12時
www.mam.paris.fr
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