現代アート普及への試み Palais de Tokyo

1937年に建てられたパレ・ド・トーキョーPalais de Tokyoパリのアート最前線としてはもちろん、カルチャー好きのナイトスポットとして人気なパレ・ド・トーキョー。日本人から見ると、トーキョーという名に愛着を感じたり、なぜ、東京?という疑問を持ったりしてしまうかと。

1937年のパリ万国博覧会の際にトロカデロに建てられたル・コルビジェの弟子、坂倉準三の日本館(現存しない)と混同されやすいが、同年5月にフランス美術を扱う近代美術館Palais des Musées d’Art Moderneとしてオープンしたのが、今日のパレ・ド・トーキョーだ。セーヌ川沿いの現・ニューヨーク大通りは、当時、トーキョー大通りだったため、パリジャンからは『トーキョー』の愛称で親しまれた、というのが後、ネーミングに。

ちなみに1945年でトーキョー大通りという名称は廃止されたが、友好国日本の首都の名を掲げる必要があると、97年からパーキング広場と言えるパレ・ド・トーキョー前のスペースをトーキョー広場と命名。しかし、パレ・ド・トーキョーの住所はプレジドン・ウィルソン大通り13番地のままであり、存在するようで、存在しないのがトーキョー広場。

スティーブン・パリーノがキューレートした展覧会のリバイバルBASTARD CREATUREまた、元々、パレ・ド・トーキョーは東翼のパリ市立近代美術館と西翼を合わせた全体を指し、正確にはコンテンポラリー・クリエーションの場というSite de création contemporaineがついてこそ、西翼を示すのだが、今日ではパレ・ド・トーキョー=現代アートセンターで通っている。

さて、このパレ・ド・トーキョーが現在の姿になったのは、2002年のこと。第二次世界大戦中は倉庫と化し、1961年にパリ市近代美術館として再オープンするが1977年、建物の西翼、現・パレ・ド・トーキョー部分のコレクションはポンピドゥー・センターへ移動。後、FNAC国立現代美術基金の倉庫、CNP国立写真センターへと変身を遂げ、2002年1月に美術評論家でありキューレーターであるジェローム・サンとニコラ・ブリオーのプロジェクトとしてオープンした。

区切りの少ないオープンなスペースは、壁こそ白いものの、打ちっぱなしの床、 天井も剥き出しの躯体。既存の美術センターの形式めいた堅苦しさを取っ払い、大衆に馴染みにくい現代アートへの抵抗を和らげ、且つ、いたる形態の作品にも対応できる柔軟な空間が目指されている。この空間はパレ・ド・トーキョーが注目された理由の一つでもあり、以後、内装として、このスタイルが流行にも。

絵画の可能性を追求した米国アーチスト、スティーブン・パリーノの回顧展STEVEN PARRINO RETROSPECTIVE 1981 - 2004

そして、開館時間が12時〜24時というのも、都市生活に溶け込める要素である。平日の夜にも楽しめる映画などの感覚で、気軽に出向くことが出来る。
また、常設展のないパレ・ド・トーキョーでは、展覧会の飾り付け中を見学するのも興味深いこととして、準備中スペースの公開も行っている。一般の美術館では舞台裏とされる、展示のプロセスに立ち会えるというのも特徴の一つである。作品のないアートセンターなんて、という概念を覆すコンセプトと言える。しかし、実際は、時期をずらして複数の展覧会があり、それ以外にもコンサート、映画上映などイベントも定期的に催されているため、いつ行っても、全く何もないとがっかりすることはないし、こだわりの書店、ブティックやカフェテリアもあるので、十分楽しめるお出かけスポットである。

絵画の可能性を追求した米国アーティスト、スティーブン・パリーノの回顧展STEVEN PARRINO RETROSPECTIVE 1981 - 2004 肝心な展示と言えば、現在、メインとなるのは『黒のマークLa Marque Noire』。絵画の可能性を追求した米国アーチスト、スティーブン・パリーノの回顧展、彼がインスピレーションを受けた作家達の作品展『ビフォア』 、彼がキューレートした展覧会のリバイバル『バスタード・クリエーチャー』の3展示。回顧展を見ることによって、パリーノの作品と出逢い、彼の制作プロセスを裏付ける、参照された作品を同時に見ることが出来るというのは、作品への理解を促す素晴らしいシステムだ。

作品について知りたい時は、メディアターMédiateur(女性の場合はメディアトリスMédiatrice) というバッチをつけた、フレンドリーなスタッフが館内に常時いるので、ガイド予約などの面倒な手続きなしで、気軽に作品説明を聞くことも出来る。そんな、大衆が取っ付きにくい現代アートの『普及』へのアイディアが凝縮されているのが、パレ・ド・トーキョー。現代アートはちょっと、という方も、是非、一度は足を運んで欲しい。

Palais de Tokyo / site de création contemporaine【パレ・ド・トーキョー】
13, avenue du Président Wilson à PARIS
メトロ : 9番線Iéna
開館時間 : 12:00〜24:00
閉館日 : 月、1月1日、5月1日、12月25日
入場料 : 6ユーロ、割引4,5ユーロ(60才以上、26才以下)
http://www.palaisdetokyo.com/

LA MARQUE NOIRE 【黒のマーク】
STEVEN PARRINO, RETROSPECTIVE 1981-2004
2007年5月24日〜8月26日
BEFORE(PLUS OU MOINS)、BASTARD CREATURE
2007年5月24日〜7月25日

by aki on 2007-06-06 [美術館・博物館]
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『現代アート普及への試み Palais de Tokyo』へのコメント1件

  1. […] 1975年にアメリカンフットボールのスタジアムとして米国・ニューオーリンズに建設されたルイジアナ・スーパードーム。スーパーボールというと、跳ね返りが大きいゴム製のボールの玩具を思い浮かべるが、米国では国技と言えるアメフトのプロリーグ決勝戦という、スポーツの大イベント。そんなスーパーボウルの華々しい試合会場としてだけではなく、ローリング・ストーンズのコンサートや264代ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世を迎え入れた多目的ドームがスーパードームなのである。そんなスーパードームも、華やかさとは一転して、2005年にはハリケーン・カトリーナによって被害を被り、市内の浸水の間は仮設住宅とも化する。最大の娯楽の場、そして災害時の避難所としてのパラドックスな変身。 そんな『スーパードーム』をタイトルに掲げ、パレ・ド・トキョーで先月末から5人のアーチスト展が開催されている。 […]

    Pingback by 娯楽から悪夢へのデカダンス Superdome »パリ発フランス情報ハヤクー::hayakoo - 2008-06-14 @ 8:52 pm