夏休みに芽生えた少女の恋の行方は Naissance des pieuvres
少女時代、スポーツが出来たり、ちょっと大人っぽかったりする同性のクラスメートや先輩に憧れた経験のある方は少なくないと思う。そんな甘くほろ苦い思い出を、夏休みの気だるい雰囲気にのせて描いたのがこの作品、『ネッサンス・デ・ピィオーヴル』。日本語に訳すると、「頑固な女達の誕生」といった感じ。夏の間に芽生えたほのかな恋は、決して幻ではなかった…といったような、なんとも意味深な香りがするタイトルだ。
パリ郊外、セルジー・ポントワーズCergy-Pontoiseで暮らす、15歳の少女マリー。友人のアンヌが習うシンクロナイズドスイミングの発表会を見にいった際に見かけたフロリアーヌのことが、どうしても頭から離れない。水の中では天使のように美しいフロリアーヌも、実生活ではいわゆる「すすんだ」少女。体の発育も、マリーとは比べ物にならないほど良い。最初は、健気に近寄ってくるマリーを男子との逢引のダシにしたりしていたものの、今迄女友達が全くいなかった彼女は、次第にマリーに心を開き始める。
さてこの作品は、28歳の女性監督、セリーヌ・シアマのデビュー作。彼女は、泣く子も黙るフランス一の名門映画学校『フェミス(Fondation européenne pour les métiers de l’image et du son, 通称femis)』の卒業生。卒業制作として書いたシナリオを映画化したものだ。先日のカンヌ映画祭では「ある視点」部門にて上映され、若き彼女の映画監督としてのキャリアは、もう約束されたようなもの。勿論『ネッサンス・デ・ピィオーヴル』を見れば、そんな溢れるばかりの才能を確認することが出来る。なお、シンクロナイズドスイミングへの憧れという題材は、彼女本人の体験に基づいているとのこと。
この作品には、登場人物達の家族を含めて、大人が殆ど登場しない。そこに存在するのは、夏休みの少女達の世界のみだ。シアマ監督は、あえて携帯電話などの時代を感じさせる小物を一切登場させず、時の普遍性にこだわったという。それがなおさら、夏休みというある意味「非日常」の世界を強調させているかのようにも思える。そんな中で生まれる、密やかな思春期の胸のざわめき。例え同性と恋に落ちた経験がなくとも、ちょっぴり懐かしい感情に駆られてしまうはずだ。
Naissance des pieuvres【ネッサンス・デ・ピィオーヴル】
2006年 フランス作品 100分
監督 : セリーヌ・シアマCéline Sciamma
出演 : Pauline Acquart, Louise Blachère, Adèle Haenel
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