ロダンに並ぶ近代彫刻の巨匠ブールデル Musée Bourdelle
多くの芸術家を魅惑したモンパルナス地区。駅の脇を入った通りに、この地区で制作活動を行った彫刻家アントワーヌ・ブールデルAntoine Bourdelleのアトリエ住居を改装したブールデル美術館Musée Bourdelleがある。
フランス南西部はトゥールズToulouse市に近い、モントーバンMontauban市で1861年に生まれ、幼少から家具職人である父を手伝い、木工に触れたブールデル。15才でトゥールズ市立美術学校に入学、1884年には奨学金を受け、パリの美術学校ボザールでファルギエールFalguièreのアトリエに入るが中退。1893年からは巨匠、ロダンAuguste Rodinに師事し、助手として、また共同制作者として友情を深めるが、1900年に制作したアポロンの頭像Tête d’Apollonからロダンの美学から外れ、独立する。同時にロダンとともにロダン学院を成立し、教育者としても目覚めた。彼のクラスからはジャコメッティAlberto Giacomettiなどの彫刻家も生まれ、彫刻家としてでなく教育者としての名声を残している。
モンパルナス駅脇の袋小路の通りアンパス・デュ・メーヌimpasse du Maineに住み着いたのは1885年。1929年に他界してから、ロダンのようにブールデルの作品を保存したいと言う妻、娘とその婿の誠意と努力が実り、美術館として1949年にオープンを迎える。当時のアトリエをそのままの姿で保存し、ここで生活したアーティストの面影を伝わるようにと環境の保存にも気配った。そして通りも彼へのオマージュからアントワーヌ・ブールデル通りと改名された。
その後、アーティストの出身地を偲び、モントーバンの赤いレンガ造りのアーケードを設置し、1961年には壮大なモニュメントの保存に適した環境を求めて、石膏像を展示するホールも建設される。1992年には旧大統領ジャック・シラク氏によって除幕された別館、近代的スペースも増設され、貴重な資料や重要コレクションの展示、保管に利用されている。
通りからも見える中庭には、青空をあおいでブロンズの巨大な馬像やアダムAdamを始めシャンゼリーゼ劇場のレリーフが見られる。
1909年に大成功を納めたギリシャ神話の英雄『弓をひくヘラクレスHéraklès archer』も回廊にある。ブールデルの彫刻が激情的な肉付けのロダンの捉え方から脱したのは、この淡々とした面での構成である。
足場となるごつごつした岩場の細部は大きな面で切り落とされ、丸みさえ帯び、筋肉質の身体はポイントを押さえて淡白になっている。顔は生々しい表情はかき消され、人間味を薄れ、マスクと化している。館内にある研究過程の小型習作を見るとよく分かるが、最初の像はロダンを思わせる、もっと生々しい緊張感溢れる造形なのだ。過程を追って、徐々に表現したいパーツがクローズアップされ、そうでないパーツを剥ぎ取られ、いたってシンプルでありながら、臨場感溢れるダイナミックな造形に仕上がっている。
また、新館ではモントーバン市のモニュメントを始め、リュクサンブール公園jardin du LuxembourgにあるベートーベンBeethovenの頭像が見られる。ブールデルがベートーベンの顔を知ったのは既存の肖像画とデスマスクからだという。繰り返される習作の中に彼が表現したいベートーベンの肖像への葛藤が見受けられる。1888年に始めたこの肖像シリーズが彼の作風の成熟を促し、翌年、アダムでサロンの若手賞を受賞している。
この美術館の面白さは、アーティストのアパートで見られる当時の家具や彼の骨董品コレクション、新しくできた別館スペースの写真や新聞の切り抜きといった貴重な資料にもあるが、やはり彼の作品の豊富な習作を辿るところにあるのではないだろうか。
彫刻は木や石を彫るというものもあれば、粘土を使って肉付けし、石膏で型を取り、ブロンズを流し込んで仕上げるものがある。ブールデルの作品は後者がメインとなるが、付いた肉を削ぐという木彫的なプロセスを踏まえ、どういうふうに完成させて行くかという製作過程。ロダンを超えたといわれる、ブールデル芸術の全貌を観覧したい。
そんなブールデルの作品だが、約20年振りに日本でも大々的な回覧展が開催されている。『弓をひくヘラクレス』などの大作を始め、彫刻75点、水彩・デッサン48点で構成される展覧会でブールデルの作風を堪能しよう。
Musée Bourdelle【パリ市立ブールデル美術館】
18, rue Antoine Bourdelle 75015 Paris
メトロ : 4、6、12、13番線Montparnasse - Bienvenüe
TEL : 01 49 54 73 73
開館時間 : 10:00〜18:00
閉館日 : 月、祝日
入館料 : 無料(企画展は4.5ユーロ)
www.bourdelle.paris.fr
巨匠ブールデル展
2007年6月9日〜7月16日 北九州市立美術館
2007年7月24日〜9月16日 新潟市美術館
2007年9月21日〜11月4日 高松市美術館
2007年11月11日〜12月24日 いわき市立美術館
2008年2月6日〜2月19日 松坂屋美術館 (名古屋)
by aki on 2007-10-09 [美術館・博物館]
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