コメディ・フランセーズでモダンな『フィガロ』 Le Mariage de Figaro

コメディ・フランセーズでモダンな『フィガロ』 Le Mariage de Figaro

フランスを代表する劇団とその劇場といえば、パレ・ロワイヤルの中庭に構える国立コメディ・フランセーズ。一口にコメディ・フランセーズといっても、現在コメディ・フランセーズ傘下の劇場は、6区のヴュー・コロンビエ劇場Théâtre du Vieux-Colombierと、お向かいのカルーセル・デュ・ルーヴルの中にあるステュディオ・テアトルStudio-Théâtreと、あと2つある。しかしいずれも、コメディ・フランセーズを名乗るようになったのはごく最近のことであり、やはり総本山はここサル・リシュリュー Salle Richelieuであることには間違いない。

コメディ・フランセーズ劇団がルイ14世によって創設されたのが1680年。モリエールを始めとし、フランスを代表する多くの劇作家の作品を上演してきた。しかし、その劇場は最初からパレ・ロワイヤルの中にあったわけではなく、パリ中のあちらこちらを転々としている。サル・リシュリューに落ち着いたのは1799年。王立劇団として活動を禁止されたフランス革命時を経て、新生フランス政府のもと国立劇団として再スタートを切った際のこと。建物自体は1778年のもので、現在でも当時の雰囲気が色濃く残る、とても魅力的な劇場である。せり出した桟敷席、小さめの舞台と、娯楽を求めて毎晩のようにここに通っていたパリジャンの熱気が目に浮かぶようだ。ただし、場内では写真撮影が一切禁止なのが残念。

コメディ・フランセーズでモダンな『フィガロ』 Le Mariage de Figaro

さてこのサル・リシュリューの、2007年度シーズンのオープニングとして選ばれた演目が、『フィガロの結婚』である。18世紀フランスを代表する劇作家、ピエール・オギュスタン・カロン・ド・ボーマルシェによる『スペイン三部作』の、『セヴィリヤの理髪師』に続く第二作目として知られる。また、後に作曲されたモーツアルトのオペラ(Les noces de Figaro, 邦題は同じ)でも有名だ。
貴族社会を痛烈に批判したこの作品、実は発表当時はコメディ・フランセーズにて上演拒否の憂き目に会ったという曰くつき。ボーマルシェがこの作品を書いたのは1778年だが、コメディ・フランセーズでの初演は1784年である。なおこのボーマルシェ、文学作品の著作権という概念を始めて提案した人物でもある。ビジネスマンとしての手腕も持ち、なかなか当時としてはエキセントリックな人物だったようだ。

アルマヴィーヴァ伯爵とその召使フィガロ。伯爵夫人とその女中スザンヌ。フィガロとスザンヌは結婚を控えた仲だが、好色な伯爵は、一度は廃止にした初夜権(目上の者が、花嫁と新婚初夜を共にできるというトンデモない権利)を復活させ、スザンヌの純潔を頂いてしまおうと目論む。フィガロはなんとか阻止しようとするが、そこにフィガロに恨みのある医師バルトロ、フィガロとの結婚を密かに狙う女中頭マルスリーヌ、惚れっぽい若い小姓シェルバン・・・など様々な登場人物が複雑に絡みこんできて、サブタイトル『狂った一日 La folle journée』通り、とんでもないドタバタになってゆく。

Répétitions du Mariage de Figaro mis en scène par Christophe Rauck (Grand Palais, juillet 2007) ©Cosimo Mirco Magliocca
© Cosimo Mirco Magliocca

この大作を演出するのが、クリストフ・ロック。彼はアリアーヌ・ムヌシュキン Ariane Mnouchkineの主催する『太陽劇団 Théâtre du Soleil』出身であり、意欲的なプログラムで定評のある、サン・ドニの『ジェラール・フィリップ劇場 Théâtre Gérard Philipe』のディレクターに就任したばかりでもある。フランスの現代演劇において非常に評価が高い人物だ。
そんな彼が描く『フィガロ』は、驚くばかりにモダンである。そもそもロックはこの物語の持つモダンさに魅かれ、インテリ臭い云々を一切抜きにして演出したとのことである。原作の痛快さを残しながらも堅苦しさなしで気軽に鑑賞でき、その間の取り方や振り付け、俳優陣の軽やかな演技など、現代劇として見ても全く違和感のない仕上がりとなっている。衣装もまるでファッションショー?というくらい現代的かつキュートで、なんとシェルバンが着用しているのはジャージ(!)。

お堅いイメージのあるコメディ・フランセーズ・・・を、鮮やかに覆してくれる今回の『フィガロ』。フランス一の劇団ならではの演技の高い質はそのままなので、安心して楽しめるのは勿論のこと。安い席ならば11ユーロからあるので、気軽にフランス演劇の今に触れてみよう。

Le Mariage de Figaro ou la Folle Journée【フィガロの結婚】
原作 : ピエール・オギュスタン・カロン・ド・ボーマルシェPierre-Augustin Caron de Beaumarchais、1778年
演出 : クリストフ・ロックChristophe Rauck
上演時間 : 3時間(休憩込み)
2008年2月27日まで

Comédie Française Salle Richelieu
【コメディ・フランセーズ・サル・リシュリュー】

http://www.comedie-francaise.fr/
Place Colette 75001 Paris
メトロ : 1・7番線 Palais-Royal Musée du Louvre
チケット : 11ユーロ~44ユーロ。上記公式サイトよりオンライン購入可能。

by mayu on 2007-10-16 [シアター]
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