モンマルトルに、リュティエ(Luthier)と呼ばれる弦楽器職人のアトリエがあります。アーティスト達が集まるこの界隈。入口から覗くアトリエ内には、様々な国のギターが飾られ、又天井からはこれから正にギターになろうとしている木材が吊るされています。ここはパリにある正真正銘の「リュティエ」のアトリエなのです。
スペイン出身のリベルト・プラナスさん(Liberto PLANAS)。先日ご紹介した、パリと日本を繋ぐアソシアション「Bonjour Paris」とブティック「モンマルトルのまねき猫」のオーナーである中安智子さんのご主人です。ちょうどまねき猫のブティック斜め向かいに、彼はご自身のアトリエを構えているのです。
ヨーロッパのみならず世界的にも有名な彼はプロの弦楽器職人でありコンセルヴァトワールなどでも製作指導にあたられました。そして同時にプロギタリストでもあるのです。現在に至るまで、世界各国でコンサートをこなし、レコードをリリース。コンセルヴァトワールをはじめ、パリの国際ギターアカデミー(Académie Internationale de Guitare de Paris)などで教鞭をとられたお方。ギターのことを、そして弦楽器のことを知りつくした彼を慕い、現在では世界から多くの有名ミュージシャン達が彼にギターを注文しています。
母国アンダルシア州にあるアルメリアで生まれたリベルトさんは、7歳の頃からギターに目覚め始めます。当時鉄柵作り職人だった父の側で育った彼は、父のアトリエがとても熱いので、ひんやりした近所の弦楽器製作アトリエを訪れてはそこで長い時間を過ごしていました。見よう見まねで弦を弾くこのギター少年はいつの日からかその面白さに魅了され、ギタリストとしての自覚と共に、ギター製作への興味を抱きます。弦楽器製作の職人の扉を開いたのはわずか14歳の時でした。職人、そしてアーティストとして、とても早きスタートを切ったリベルトさん。ギタリストになりたい、ギター製作職人になりたい、と思うよりもまず、第一にギターというものが日常生活の中で極身近にあった事が運命の始まりだったのだとおっしゃいます。
14歳の時、アルメリアを始め、スペイン国内にあるギター製作アトリエへ通い、その後バイオリン、リュートの製作学校にも通い、あらゆる弦楽器製作の技術を磨きました。
19歳の頃、同時に本格的にギタリストとして行動開始。世界的にも有名なスペイン出身のギタリスト、アンドレ・セゴヴィア(Andrés Segovia 1893-1987)に認められ師事を仰ぎます。ギタリストや音楽家達にとっては偉大な父であり又、神のような存在だったセゴヴィア。ギター演奏の教育者として数々の有名アーティストを排出した人でもあります。そんな氏に見染められたリベルトさんはその才能をみるみると発揮。後にプロとなり世界各地を巡ることになります。「氏は音楽の愛というものを教えてくれた。只、目の前にある楽譜を弾き、美しいメロディーを奏でるのではなく、その曲をどのように表現するのかが大切。自分だけの思いで弾いてもいい音はでない。一つの作品を生んでくれた作曲者への尊敬の意も込めて演奏するのが音楽の愛であるということを教えてくれた。」当時を振り返りながら、愛情一杯にギターをかかえ話してくれたリベルトさん。
彼の腕に挟まれたギター、指が弦をはじいた瞬間に誰もが笑顔になるような美しい音色がまるで生きているかのようにリズミカルに響きました。奥行きのあるその音は想像が想像を膨らますような愛情たっぷりの優しく豊かな音色でした。
27歳の頃にはフランス・パリ郊外にあるコンセルヴァトワールにてギタークラシックを教えました。そして1956年、35歳の時にギター学校「Ecole Francaise de Guitare」を設立。後1976年に「Academie Internationale de Guitare de Paris」に改名。ありとあらゆる弦楽器の世界を多くの人に伝えたリベルトさん。この後パリ・モンマルトルにご自身の弦楽器製作アトリエ「Liberto PLANAS」をオープン。その後も現在に至るまでパリ市のアトリエで一般市民を対象に製作指導にあたっています。彼の崇高な技術は世界の弦楽器技術継承を大きく支えているのです。というのも、今や正確な技術をもとあった作り方のままキチンと伝承する人がいなくなってきていると言われるキューバの「トレース」を復興させる為、2000年から2003年にかけ、キューバ国営弦楽器製作アトリエなどでも指導にあたったのも彼でした。又、2005年には茨城県にて催された「ギター製作展inやさと」の審査委員として来日したこともあります。
現在はこのご自身のアトリエでオーダーのギター製作、弦楽器製作指導、そしてギター演奏(プロ対象)のマスタークラス指導をなさっています。店内に入ると色々な種類のギターが飾られていることにまず驚くでしょう。
南米音楽には欠かせない「チャランゴ」「レキント」をはじめ、しなやかなフォルムが美しい「ロマンチックギター」、アルジェリアの「マンドラ」、そして丸みを帯びた小さく可愛らしい「キンタ」など。。。。そのコレクションは驚くものばかり。
彼の製作アトリエでは数々のオーダーギターがその完成の時を待っています。種類にもよりますが、1つのギターを創り上げるのに数年、十年以上かかるものもあるのだそう。まずは重要素材となる木材をのこぎりやかんなを使って丁寧にカットします。違う木を貼り合わせるその作業は微妙に素質が違うことからも互いがすぐに馴染むわけではないのだそう。馴染ませるのに時間をかけることで音の育つギターになるのだそうです。互いを合わせるにふさわしい状態になるまで何年も自然乾燥して待つ作業は気の遠くなるような時間を費やします。又同時に、修復作業も引き受けておられます。
そんな彼の元へ世界各国の有名アーティスト達がやって来ています。記憶に新しい昨年2009年には、ジプシー・キングス(Gipsy Kings)のメンバーであるカヌート・レイエス(Canut Reyes)がアトリエを訪問(HPにて動画が見れます)。その他にもナイジェリアの名ギタリスト、キザイア・ジョーンズ(keziah Jones)や、ジョルジュ・ムスタキ(Georges Moustaki)のバックギタリスト、トニーニョ・ド・カルモ(Toninho Do Carmo)、キューバの音楽家グループ、ファミリア・バレラ・ミランダ(Familia Valera Miranda)など。
アトリエでは、未来の弦楽器職人を目指すべく研修生達がリベルトさんの指導の元、日々製作に情熱を傾けています。世界各地を訪れ、数々の弦楽器を手に取り、多くの人々と触れ合ってきたリベルトさん。訪問先では木を見つけるとすぐ叩いて素材を確かめてしまうのだそう。音楽そして弦楽器をこよなく愛し、長い長い時をかけ、その素晴らしい才能を継承しておられる、これらかの未来になくてはならない職人・リュティエ。音楽の愛を心と体で伝えてくれる彼のアトリエからは愛情一杯の音色が聞こえてきます。
*こちらのアトリエはブティックとしてオープンはしておりませんので、詳細については、電話又はメール(日本語可)にてまずお問い合わせの上訪れて下さい。
Liberto PLANAS Luthier de Arte【リベルト・プラナス】
22 rue Durantin 75018 Paris
Tel : 01 53 28 22 36
営業時間: 毎日(要ランデブー)
http://www.libertoplanas.com
tlplanas@yahoo.co.jp




























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