30年経った今、HIVの証人 Les Temoins

アンドレ・テシネの新作レ・テモワン1984年、20歳のマニュは、仕事を求めてパリに上京。オペラ歌手になるために勉強をしている姉が住む安ホテルに転がり込む。
ある夜、男同士の出会いの場に出かけ、50代の医者でホモセクシャルのアドリアンと知り合う。二人のプラトニックな交友は続く。
アドリアンは、マニュをいとおしく感じるのだが、マニュにはその気は全くない。
そのため、彼らの間には何も起こらない。

マニュは、アドリアンから、子供が生まれたばかりの新婚のカップル、彼の親友であるサラと、その夫メディを紹介される。サラは、作家、メディは、警察官。
この一見、幸せそうに見えるカップルも、実際はうわべだけであり、どこかギクシャクとしている。

遊泳中、メディに命を助けられたマニュの心は、次第に彼へと傾いていく。
メディも、それを受け入れる…と、これだけなら、よくある(?)ストーリーなのだが。
それだけでは終わらなかった。
ある日、マニュは自分の身体に異常(赤い斑点)を発見する。
彼は、フランスで最初のHIV感染者であった。
それにより、新婚生活とホモセクシャリズム、エイズによる死の恐怖、友情の崩壊など、アドリアンを始め、マニュに関わった人々の人間関係は次第に混乱していくのである。

アンドレ・テシネの新作レ・テモワン、サラ役のエマニュエル・ベアール医者アドリアン役のミッシェル・ブラン、サラ役のエマニュエル・ベアール、メディ役のサミ・ブアジラ、マニュ役のジョアン・リベロー、そして、彼の姉役に、ジュリー・ドパルデュー (ジェラール・ドパルデュー の娘)と、なかなか豪華なキャステイング。
ミッシェル・ブランは、ホモらしさには欠けたが、マニュへの想い、彼の医者としての立場、そして、それぞれへの友情を父親のように演じ、いい味を出している。
サラ役のエマニュエル・ベアールは、作家としての自分、マニュと逢瀬を重ねる夫との新婚生活の葛藤を上手く演じている。飾り気のない、自然な感じの彼女はとても、チャーミングだった。
メディ役のサミ・ブアジラも、(その当時、まだ、エイズについては予備知識も何もなかった)まずは、自分に感染したかも知れない、新奇病エイズと、その死の恐怖をリアルに演じている。
ストーリーは、あながちは、重くなる題材なのだが、ドキュメンタリーのように淡々と進んでいく。

何故、今、このテーマなのか?それは、私には解らない。
しかし、すでに30余年もの月日が過ぎつつも、未だに苦しむ人々は減少していない。
これは、事実である。

映画中で、アドリアンは、知り合ったばかりのマニュをセーヌ川遊覧クルーズに誘う。
夫との関係に思い悩むサラは、セーヌの岸辺に。
死期の迫ったマニュ。失いつつある視力に映るのは、セーヌ川遊覧船のライトの光り。
効果的にセーヌ川が使われているのが、とても印象に残った。

Les Temoins レ・テモワン
フィクション
監督 : アンドレ・テシネ
時間 : 1時間52分
配給会社 : UGC
フランス公開 : 2007年3月7日より
http://www.ugcdistribution.fr/

by chiharu on 2007-03-11 [シネマ]

 

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