ビュット・オ・カイユ通りと交差する緩やかな坂道のエスペランス通り。メトロの駅からは少し離れている場所にあるけれど、とても静かで住民達の日常を垣間見るようなほっとする雰囲気があります。
優しい傾斜をのぼる途中、ふわりとライトが灯る窓越しに糸や布地、リネンの小物などが可愛らしくディスプレイされた小さなお店「ラ・クラリエールLa Clarière」があります。穏やかな笑顔で迎えてくれたのはオーナーのシャロン・マクドナルド(Sharon Macdonald)さん。インテリアコーディネーターとして10年以上活躍された今、今度は自分の手で自分のデザインを形にしようと独立。大好きなリネンでインテリアをクリエイトするアトリエブティックとして2008年11月にこの「La Clarière」をオープンしました。
「ラ・クラリエール」という店名は、綴りの少し違う「Clairière クラリエール(林間の空地)」という単語を崩した彼女のオリジナル。「Clair クレール(明るい)」や「Clarté (光)」という意味も掛け合わせています。「真っ暗な森の中にたった一ヶ所だけ木漏れ日の落ちる場所が見られるように、光のある場所、といった気持ちを込めてつけたの。その輝きは時に明るく、時に暗く、日々様々な変化を持ちながらその時々の個性を発揮するように。何かをデザインする時も立体を表現するには明暗が必要でしょ?だからこのブティックも来てもらう度に毎回何か違うものが置いていると思うわよ。」そんな彼女らしい想い溢れる店名なのです。
実は彼女、スタートは建築家だったです。小さな頃から建物を見たりデザインしたり、その構成をイマジネーションしたりすることが好きだったんだそう。建築家となったその後も、世界各地で活躍している有名な日本人建築家、磯崎新(Arata ISOZAKI)氏のもとへ修業する為に日本へ行ったり、はたまたロンドンなどで活躍したり。建築家と言えども、建物の事ばかりでなく内装やインテリア、全ての住居空間をデザインしクリエイトすることも必要。その分野も大好きだったという彼女はその後インテリアデザイナーとして独立し活動を開始。中でもパリで名高き女性インテリアデザイナー、アンドレ・プットマン(Andrée PUTMAN)との2年間はとても貴重な時間だったと言います。
建築家やインテリアデザイナーだった頃は顧客の要望をより確実に再現することが仕事。時に自分の個性を発揮すれども、あくまでもオーダーに忠実に、が第一。一つの作品が出来上がるまでの綿密な打ち合わせ、作業、そして沢山の人との関わりを要すこと。いつの日か自分の中に溢れるデザインやイメージを自分で考え、デザインし、そして自分だけの手で作り上げたいと思う気持ちが目標となり、このブティックとなって叶ったのだそうです。手芸好きの母親の側で育った彼女も又、手縫い作業はプロ級の腕前。そんな彼女の手作りコレクションが素敵なインテリアを演出するアイテムとしてブティックを埋め尽くしています。
拘りは「洗練とナチュラル」。高級なものは確かにリュクスだけれど、彼女はシンプルに「洗練」された心地良い美が好きなのだそうです。「例えばピクニックに高級なワインを用意すればそれはとても素晴らしい食事になるけど、安くても洗練された美味しいワインは心が満たされる充実感と心地良さがあるでしょ?」とシャロン。フランスのあちこちを探し歩いたアンティークリネンはどれも心を込めて選び抜かれた状態の良いもの。又生地ばかりでなくナチュラルアンティーク雑貨などもちらほら置いています。そして、それらのリネンやアンティークリボンなどを加工して新たに作られたオリジナル作品も並んでいます。彼女の手にかかれば洗練されたベルエポックな部屋があっという間にコーディネイトされ、ブティックごと買い占めたいほど魅力的になるのです。トーションやテーブルクロスはレアなものも多くアンティーク好きには溜息もののはず。
彼女の作品のコンセプトは洗練と共に、平穏、静けさを醸す女性らしいもの。一筋の光が森の中に静かに落ちるそれのように、「誰かに穏やかさを贈りたい」。そんな思いが込められた白やベージュをベースにした柔らかい雰囲気のものが目立ちます。中には第二次世界大戦の時に兵士達が寝袋入れとして使っていたリネンをリメイクしたサッシェがありました。どこか力強さを感じるエポックも、生地に赤と緑のスタンプ模様を施して、チェック模様の中布で丁寧に処理すれば優しく可愛い巾着に変身。その他の作品にも施されているスタンプ模様。実は版画から彼女がデザインを彫りおこし生地に直接プリントしているのです。丸や花に葉っぱ模様、それぞれに色の濃淡をつけながらデザイン。「こうすると真っ赤な赤も只、奇抜で躍動的な赤色ではなく優しいタッチになるでしょう?」とにっこり。オーダーメイドも可能で、好きなモチーフを持参すればデザインから打ちあわせて希望の品を作って下さるそうです。店内にはこれまでのオーダー品の写真ファイルなどもあります。「葉っぱスタンプで、こんな形で緑色がいい」というお客様のオーダーに作成したスタンプ版画。ご希望ピッタリのテーブルクロスが出来上がったようです。
又、今年の春から子供服コレクションがスタート。スタンプ模様バージョンの他に、アンティークモチーフをポイント加工したり、アンティークレースを襟に施したりと一着一着手作りです。作っていく途中で想像がどんどん膨らみ、作ってみたいデザインが一杯なの、というシャロンのデスクには書きかけのデッサンノートが沢山。
又、彼女の思う洗練さは作品のあちこちにも見られます。裏側処理の丁寧さ!端の始末を更に縫い付け2重処理に。こうすることでほころびも少なく丈夫で長く着てもらえるものに。
現在ブティック営業は水曜と土曜の2日間だけ。日曜はお休みですが他の曜日はここにミシンや台を並べ、アトリエにして作業をしているのだそうです。事前に予約を頂ければ、アトリエ作業中の日も開けてくれるとのこと。
「ラ・クラリエール」はクリエイトテキスタイルブティックでもあり又、シャロンのアトリエでもあります。どれもこれもほんの少しの量しか品揃えはないけれど、素材、色合い、雰囲気、ハーモニー、どれもたった一つしかない素敵なものが揃っていて、いつも何か違うものが並んでいるはずだから毎回来る楽しみがあるわよ、と彼女。変化はあれどそれぞれの個性がデザインやモチーフのインスピレーションを次々と与えてくれのだと言います。膨らむイマジネーションはまるで建物を構成する建築家のそれと同じように、穏やかさと安らぎを与えてくれる暮らしへと形になっていきます。シャロンがコーディネイトするテキスタイルのある暮らし。きっとこのブティックを訪れると、何か魅力を持った光のあたる場所であるということを感じて頂けるはずでしょう。
8 rue de l’Espérance 75013 Paris
Tel : 01 82 09 44 79
営業時間: 14:30~19:00 (水・土のみ営業)
定休日 日 (月・火・木・金は要ランデブー)
メトロ ⑥番線Corvisart / ⑦番線Tolbiac
*ブティックは水・土のみの営業ですが、その他の曜日は彼女のアトリエとして作業をしておられます。事前に予約すればオープン可能な場合もあるそうですので、お電話にてお問い合わせ下さい。
*6月1日まで臨時閉店されています。次の営業日は6月3日(水)~となりますのでどうぞご注意下さい!
子供服 35ユーロ~
ネグリジェ 80ユーロ前後~
アンティーク雑貨 5ユーロ前後~
アンティークリネン 7ユーロ前後~
その他テーブルクロス、トーション、サック、レースなど有り。






























2010年、夏のヴァカンスは7月15日~8月15日までお休みだそうです。
ご注意下さい。