アメリカのマイナーでメジャーな現実 Jesus Camp
フランス人は、なかなかの社会派ドキュメンタリー映画好きである。ニコラ・フィリベール監督による「ぼくの好きな先生」(Etre et avoir, 2002年)といったフランス製ドキュメンタリーの大ヒットも記憶に新しいし、マイケル・ムーア監督の「ボーリング・フォー・コロンバイン」(Bowling for Columbine, 2002年)やフーベルト・ザウパー監督の「ダーウィンの悪夢」(Darwin’s nightmare, 2004年)など、他国の秀作ドキュメンタリーもロングラン上映となる。そんな中に仲間入りしそうな位パリで今話題なのが、今回ご紹介するアメリカ映画、「ジーザス・キャンプ」(Jesus Camp)である。
ニューヨークのトライベッカ映画祭で特別賞受賞、オスカーのドキュメンタリー賞ノミネートと、鳴り物入りでフランス上陸となったこの作品。アメリカに80万人から100万人いると言われる、キリスト教福音派についてのドキュメンタリーだ。ちなみに、この派の一番有名な支持者といえば、アメリカ合衆国大統領のあのお方、である。この作品のタイトルになっているジーザス・キャンプとは、司祭であるベッキー・フィッシャーが主催する、子供向けサマーキャンプを指している。
スクリーンの中では、年端もいかない子供たちが神に救われたと晴れやかな顔で語り、涙を流す。ロックにアレンジされた神を称える歌に合わせて踊り、ダーウィンの進化論を型にはまったかのように否定し、フィッシャー司祭の先導でシュプレッヒコールをあげる。そんな姿が、ただ、たんたんと映し出される。あまりにも、まるで絵に描いたような「そのまんま」な映像が続くので、下手すればノンフィクションだという実感さえ湧いてこない。
この作品を監督したのは、ハイディ・ユーイングとレイチェル・グレイディという、二人のアメリカ人女性。もともとテレビ畑で、ドキュメンタリーを撮っていたのだそうだ。「観客が、自ら考えて、疑問を投げかけることができる作品が作りたかった」と、二人はインタビューの中で話している。しかし、例え彼女たちがいくら演出的に客観的なポジションをとっていたとしても、あの映像を見たら、大半の観客が「恐ろしい」「無垢な子供の洗脳だ」という感想を抱くことには間違いない。実際、この作品を見た観客からの中傷が続いたため、フィッシャー司祭のキャンプは一時閉鎖されるのだそうだ。それだけ、カメラの向こうで行われていたことは強烈だったということ。ユーイングとグレイディがこのテーマを選んだという時点で、決して客観的にはなれない運命だったように思える。
さて、フランス人の目には、この作品はどう映っているのだろうか。福音派といわれてもフランス人には馴染みが薄いのか、映画館に置いてあったパンフレットには、鑑賞前の前知識として、福音派に関する説明が掲載されていた。そもそもフランス共和国は、厳格な政教分離を謳う国家である。様々なフランスのマスコミの批評に目を通してみたが、この福音派がアメリカの大統領選に大きな影響力を及ぼしている、ということに大きく注目をしているものもあった。折しもフランス社会は、自国の大統領選で大騒ぎ。そんなこともあり、フランス人は「ジーザス・キャンプ」を見に劇場へと足を運んでいるのかもしれない。
Jesus Camp【ジーザス・キャンプ】
2006年アメリカ作品 85分 ドキュメンタリー
監督 : Heidi Ewing&Rachel Grady
オフィシャルサイト(英語): http://www.jesuscampthemovie.com/
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