世間がテレビからのカンヌのニュースで盛り上がっている今、パリの映画館でも、カンヌ映画祭とは切ってもきれないドキュメンタリー映画が封切りとなっている。その名も「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」。セルジュ・ゲンズブールの往年の名曲と同タイトルだが、この作品が扱うのは、映画監督と映画評論家の間の関係である。このタイトルには、「愛しているわ、僕も愛していないよ」といった矛盾に満ちた意味があるのだが、監督のマリア・デ・メディロスいわく、「両者の微妙な関係を表すのには、この言葉がぴったり」。
欧州、特にフランスにおいて、映画評論の文化は、日本とは比べ物にならないほど発達している。映画監督は作品を発表し、評論家はそれに対して愛情を示したり、またその逆をしたりする。評論はその作品の入場者数を大きく左右するが、監督は媚びることなく、自らの芸術を貫いた映画を作らなければならない。そんな、一筋縄ではいかない人間関係が、華やかなカンヌ映画祭を、影から支配しているのである。
世界中からありとあらゆる映画人が集まった中でのインタビュー映像を中心に、この作品は構成されている。その出演者はまさに豪華絢爛。ペドロ・アルモドバル、ヴィム・ヴェンダース、デヴィッド・クローネンバーグ、マノエル・デ・オリヴェイラ、ケン・ローチ・・・とカンヌの常連監督が顔を揃えれば、評論家サイドも、フランスをはじめとする世界の一流紙・雑誌の名が並ぶ。
ヴェンダース監督が「よい評論を書いてもらうよりも、街で出会う人に褒められるほうが嬉しい」と言えば、仏リベラシオン紙の記者は「映画評論も、すでに一つの独立した作品だ」と言う。十人十色の意見が、1時間22分の上映時間中にぎっしりと詰め込まれ、ハイスピードな展開に、なにがなんだかよくわからなくなってくることも。しかし、ここに結論を求めてはいけない。今をときめく監督や評論家の、飾りのない貴重な意見をきけることに、この作品の醍醐味があるのだ。
監督のマリア・デ・メディロスは、自身が女優。クエンティン・タランティーノ監督のパルム・ドール受賞作「パルプ・フィクション(1994年)」にも、ブルース・ウィリスの恋人役として出演していた。本年のカンヌでは、審査委員も務める。「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」は、そんな彼女自らの体験から生まれたのかもしれない。
ただしこの作品、家庭用のデジタルビデオカメラで撮影されていると思われるので、大画面での粗い画像や、手持ちカメラゆえのブレに酔ってしまう方は、ご注意を。
Je t’aime…moi non plus【ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ】
2004年 フランス映画
監督 : マリア・デ・メディロス(Maria de Medeiros)








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