巨匠シャブロルが描く殺人事件 La fille coupée en deux

巨匠シャブロルが描く殺人事件 La fille coupée en deux
©Wild Bunch Distributions, La fille coupée en deux

ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠クロード・シャブロル監督の新作『La fille coupée en deux』が、フランスで公開となった。ストリートアーティストMiss.Ticの手によるポスターも街中に登場し、なかなか話題を呼んでいるようだ。 このタイトルを日本語訳すると、「2つに切断された娘」。ブライアン・デ・パルマ監督も映画化した、1947年にロサンゼルスで起きた猟奇殺人『ブラック・ダリア事件』をも連想させる、なんとも物騒なタイトルである。そして『La fille coupée en deux』もまた、1906年にニューヨークで実際に起きた情痴殺人事件がベースとなっている。ただし、舞台は現在のリヨンに置き換えて。

巨匠シャブロルが描く殺人事件 La fille coupée en deux
©Wild Bunch Distributions, La fille coupée en deux

リュディヴィーヌ・サニエが演じるヒロイン・ガブリエルは、リヨンのテレビ局のお天気キャスター。パーティで出会った30歳以上年上の作家シャルルと、不倫の恋に落ちる。しかし彼女には、ストーカーの如く言い寄ってくる大富豪の息子、ポールがいた。ある日、シャルルとの関係を絶たれたガブリエル。ショックのあまり寝込む娘を見かねて、ガブリエルの母はポールに連絡をとる。この娘の幸福を願ってこその行為が、後の悲劇の遠因となってしまう。

実際の事件では女は駆け出し女優、男は高名な建築家であった。このような細部の設定の変更のみならず、フランスの地方都市の狭いブルジョワやインテリ世界、21世紀を生きるフランス人ならではの恋愛スタイルや解釈を踏まえた上で、100年前に異国で起こった事件が、監督の個性とともに見事に描かれている。実際の事件では、女優も建築家もかなりの遊び人であったようだが、シャブロル版では決してそんなことはなく、二人とも至って普通である。事実よりドラマ性をあえて控えているあたりが興味深い。

巨匠シャブロルが描く殺人事件 La fille coupée en deux
©Wild Bunch Distributions, La fille coupée en deux

ただし、金持ち息子のボンクラっぷりは、いつの時代どこでも大差のない、ユニヴァーサルなもののようだ。至って普通の登場人物の中、ポールの絵に描いたような横柄さや趣味の悪さは、痛々しいほど目立つ。彼の家族の高慢ぶりも容赦なく描かれる。ブルジョワ批判といえば、オムニバス作品『パリところどころ(Paris vu par…)』でもお馴染みの通り、シャブロルの十八番。もしかして、シャブロル監督が星の数ほどある情痴殺人事件からわざわざ本件を選んだのは、この得意技をやりたかったからかなあ、なんてさえも思ってしまう。

そんなシャブロル監督からの強烈な贈り物、是非お見逃しなく。

La fille coupée en deux【ラ・フィーユ・クーペ・オン・ドゥ】
2006年フランス作品 115分
監督 : クロード・シャブロルClaude Chabrol
主演 : リュディヴィーヌ・サニエ Ludivine Sagnier、フランソワ・ベルレアン François Berléand、ブノワ・マジメル Benoît Magimel
http://www.lafillecoupeeendeux.com

by mayu on 2007-08-14 [シネマ]
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