日々人々の口を楽しませてくれる美味しいショコラ。タブレットにボンボン、ガナッシュにマカロン、ショコラショーにアーモンド。そもそも原点を辿ればそれはカカオ豆があるからこそ。そしてその生産者達がいてくれるからこそ世に美味しいショコラが広がり私達も口にすることができるのです。14区はダゲール市場通りの奥。2006年12月16日にオープンした、ショコラで埋め尽くされたブティック。一般的に言われる「ショコラトゥリー」とはまた違ったそのお店は、言わば「聖なるショコラの神殿」といっても過言ではありません。自然のグリーンと真っ白な壁に包まれたブティックはオーナーさんの思いが詰められたもの。ローランス・アレマノさん(Laurence Alemanno)。瞳の奥に何かしっかりとした志が見られる彼女はショコラの原点「カカオ」を知り尽くされたすごい経歴を持つ方なのです。というのも、実は彼女、始めはバイオテクノロジーの研究者でありました。高校卒業後バカロレアを経、ボルドーの大学にて24歳の若さで自然科学の1級教員資格を取得した彼女、小さな頃から植物や自然の美しさや不思議な美学にとても興味を持っていたのだそうです。
その後TalenceのVictor Louis高校にて1年間教師を務めた後、モンペリエ大学にて更にDEA(植物生理学の博士号)を取得。「教師になってもまだ大学に進んだのですか?」と尋ねると、「勉強する事がとにかく大好きだったの」と過去を振り返るローランス。その無邪気な表情はとてもピュア。ある年、学位論文に取り組んだ時のこと。彼女のテーマは当時の専門分野から「お米」でした。がしかし、このテーマこそが、彼女をこのブティックオープンへの運命へと導くきっかけとなるのです。
「お米」という研究テーマの内容は「遺伝子組換えについて」。自然をこよなく愛する彼女にとって、このテーマは書けなかった、いや、書きたくなかったのだそうです。ある日同じ研究室の仲間が「じゃぁ、他のテーマとして残ってるもので、カカオがあるからそれを研究してみたら?」と提案。その一言で彼女は遺伝子組み換えでなければ是非、と即決。正直言えば、カカオについては知識も薄く、ほぼ初心者だったのだそう。がしかし、その後彼女はどんどんカカオ豆に魅了されていく事になるのです。
彼女の所属は世界的にも有名な「シラッドCIRAD」(農学探求・発展を目的とする国際研究センター)。世界を誇る素晴らしい研究所です。このテーマを据えてから3年間、論文を完成させるまでにカカオ原産国へ通い、又現地の方とのコミュニケ―ション、そしてカカオの歴史や物質分析など彼女は日々研究に明け暮れました。「植物」、「生物」としてカカオにまず魅了され、木に触れることで様々な感情を受けたのだそうです。始めて訪れたのがコート・ジボアール。先進国にいる自分が向かうその国へのイメージは決して良いものではなく、募る不安はあったのだそう。がしかし、現地の人々の熱心なカカオ栽培の姿、生命のありがたさを感じながら笑顔を絶やさぬ生き活きと満たされた彼らの人生観に強く心を打たれた彼女。カカオの木が繋いでいく、生きていることの喜び。自然の中での作業は生き生きしていて、人々の明るくピュアな人間性に心を打たれます。個人的に旅行でも訪れ、カカオ豆生産国で有名なブラジルはバイア州(Bahia)にある小さな村llheusへもよく行かれるのだとか。現地には彼女を慕うプロデュクターも今やすっかりお友達。
論文後、彼女は更にカカオの木のバイオテクノロジー研究者のポストにつくことになります。まだまだ、研究したりないこと、勉強したいことが沢山あったのだそうです。ここで研究者として更に10年の月日を費やします。朝から晩までカカオについて一心に研究した日々。バイオテクノロジーからスタートし研究を始めて14年という時間が過ぎました。今でも定期的にカカオ原産国を訪れ、原産者達と直接会い、ショコラトゥリーの工場を見学し、そしてそれらが消費者へと移りゆくその事実を追い求めながら、ふと思い立った人生の矛先。以前コート・ジボワールで知る事となった現実。南北貿易の経済問題が現地の人々に、そしてその努力に大きな影響を与えているかという事。不正な取引は彼らの笑顔を台無しにしてしまいます。それから彼女は公正取引への願いも強くなりました。そして、それをつなげ、今度は消費者とのコミュニケーションに重点を置いてカカオ豆と関わっていこう、そしてカカオの木に、カカオ豆に、ショコラに、そしてそれらを生産してくれるプロデュクターの皆に貢献できる事とは何か?と彼女が起こしたものがこの「ショコラティチュードゥ」。14年間の道のりが今まさに形となって集結したもの、なのではないでしょうか。
遺伝子組換えだけは納得できないという彼女は、農学BIOをモットーとしており、ブティック内にある商品もほぼBIOのもの。そして前述の問題を体感したことから、店内奥には「エクアドルの5000本のカカオの木を支えるべく、明日の為の1本の樹木を」と題したコーナーが。そこからショコラを購入するとその売り上げで現地のカカオの木が1本植えられるに等しい力となる、という後援活動を目的とした販売コーナーです。(11月29日まで実施中)。
さて、そんな彼女が集めた選りすぐりのショコラ達。ショコラだけに限らず、カカオにまつわる全てのものが並んでいます。まずはカカオ豆そのもの。「ショコラは体にいい」と時に聞くけれど、体にいいのはショコラそのものではなくカカオ豆にあるのだそう。ローストした豆はそのまま食べてOK。全ての栄養分が凝縮した一粒には沢山のエネルギーが詰まっています。ハチミツと一緒に食べると美味しいとのこと。ローランスさんお勧めの厳選カカオ豆はブラジルアマゾン産、エクアドル産、ペルー産。生、焙煎、粉砕の3種があります。口に入れるとふわりとカフェのような香りがして、噛むとピュアな苦みが非常に爽やか。そしてとても香ばしい。苦いエグミは全くありませんでした。そして一番のお勧めタブレットは?と問うと、「やっぱりこれかな」と差し出してくれたのが「Brésil 75%」。
ブラジル産の有力プロデュクター、ディエゴ・バダロ(Diego Badaro)氏のタブレット。非常にすっきりと、さっぱりとしている中にも苦みと旨みのコクがギュッと感じられ、最後にふわっとコーヒーのような香りを残すとても大人っぽい上品な味。これぞカカオ本来の味を持つショコラ、といった感じです。パリはサントノーレ通りに構える皆さんもご存知の某有名ショコラティエでもディエゴ氏のカカオ豆を使われているのだとか。それ位優れた品質なのです。又驚いたことに、ローランスさんがモンペリエの研究所にいた頃、その有名ショコラティエ氏が研修に来たこともあったという事実も。つまり彼女は今やパリを誇る有名ショコラティエの指導者でもあったという訳です。そんな氏もしばしばこちらのブティックに顔を出されようです。
偉大なシェフの背景には更に偉大な研究者がいた、という驚きのお話です。棚には各生産地ごとに、様々な%、そしてノアゼット風味だったり山羊乳からできたものだったりとその種類は豊富。包みのデザインも各種キュートで贈り物にも喜んでもらえそう。そしてショコラのパスタなんてものも。ショコラのお塩はお肉をソテーする時に是非、とのことです。又、プレゼントにも最適なショコラショーポットとスパイスのセットやキーホルダーにアクセサリー、Tシャツなども!はたまたコスメ商品もあるので必見です。書籍などもあり、先日出版された様々なタブレットショコラの作り方が掲載されたレシピ本、「Je fais mes tablettes de chocolat – Anne Deblois (Romain Pages Editions)」では数ページに渡り、ローランスさんのショコラ記事が掲載されています。そして現地で出会ったカボス型の陶器。カカオはショコラにしたり、と食べるだけでなく形を変えて人々に伝えることができる、と感じた思い出の品なのだそう。勿論ブティックで販売されています。
又店内にはテーブルが設けられておりここでお茶をすることも可能。カカオグッズに囲まれてBIOショコラショー「Chocolat chaud maison (5ユーロ)」はいかがでしょう?厳選されたカフェや紅茶も何々?と思うものが色々揃っているのですが、何といってもカカオ研究者・ローランスさんが作る究極のショコラショー。毎日手作りの為、日によってほんの少し味が違うのだとか。それも手作りならではの楽しみ。ドロリと濃厚なカカオ100%のリッチなその飲み物。牛乳ではなく豆乳で作られるのだそうです。それでもお味はマッタリと濃い。苦みが引き立つ甘口。爽やかなのにコクがあってほんのりノアゼットの風味が隠し味。「ココア」とは全くかけ離れた濃度の正に「ショコラショー」。カカオ豆の苦みと風味が豊かな一杯です。お供にはシャンティ(0.5ユーロ)を。何とこちらも豆乳のシャンティ。さっぱりした味わいが特徴的。
奥の壁にはカカオの木がデザインされており、現地を思いながら椅子に座ります。所々に配されたカラフルな色合いの店内は、カカオ原産地の人々の活気溢れる生き生きとした雰囲気をも伝える要素。生命力を感じるすがすがしい空間です。
そして、興味深いのは定期的に開催されているローランスさんのショコラ講座。カカオに関するテーマが用意されており、子供向けのものなども。又一番人気はこれから結婚を控えた若き女性に贈る、ショコラと愛の関係といったテーマの講座。ショコラは様々な意味を持つ、というローランスさんの貴重なお話を聞くことができます。
「これほどまでの長い間、カカオの木ばかりを研修していて飽きませんでしたか?」と聞いて見ました。「いいえ、と言ったら嘘になるわ。確かに途中、もう違う研究がしたい!と思ったこともあったけれど、それでもやっぱりカカオに魅かれる思いはそれ以上だったかな。食べることだけでなく、医学的な効能、人との関わり、生命など、様々な影響がカカオにはあったから。」
このブティックの中を巡ると、それはつまりカカオの原産国を旅する講座そのもののようなもの。
「長い年月に渡って同じ仕事を続けることがとても素晴らしいことだとは言い切れないと思うの。時に人生を変えてみることも大切だわ。でも、何かキチンと1本の糸となるものに沿って変えていくことが重要。私はカカオというものを糸筋に、それに携わる、関われることで人生の矛先を変えたかった。それが今このブティックよ。」
彼女の瞳の奥に見えた強い志は、一本のカカオの木の枝のように、これからもずっと成長し発展し続けていくことでしょう。
57 rue Daguerre 75014 Paris
Tel & Fax: 01 42 18 49 02
営業時間: 水12:00~19:00 / 木15:00~20:00 / 金12:00~19:00 / 土11:00~19:00 / 日11:00~14:00、16:00~19:00
定休日 :月 火
メトロ : 4,6番線 / RER・B線 Denfert Rochereau
http://www.chocolatitudes.com
■ショコラ講座
Cacaoyer, Cacao et Chocolat (1時間30分、6~10人、28ユーロ)
Inspiration Cacao (2時間、4~8人、要筆記用具、25ユーロ)
A la decouverte des goûts du chocolat (2時間、6~8人、35ユーロ)
Enterrement de vie de jeune Fille (1時間30分、6~8人、28ユーロ)
Anniversaire tout chocolat / Atelier Enfant (1時間30分、6~8人、28ユーロ)
その他、出張講座、個人内容講座なども承られておられます。
*開催曜日は基本的に毎週水・日曜日ですが、講座によって変わってきますので、その都度お問い合わせ願います。




























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