いまどきなパリのミュージカル映画 Les chansons d’amour

Les chansons d'amour リュディヴィーヌ・サニエとキアラ・マストロヤンニ
©Bac Films, Les chansons d’amour

カンヌ映画祭のコンペティション部門にも登場した、クリストフ・オノレ監督の「レ・シャンソン・ダムール(愛の歌)」がパリで公開となっている。このオノレ監督、36歳と若く(しかもイイ男)、フランス映画界の次世代を担う人材として大きく注目されている。もともと、一流映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」から批評家としてキャリアをスタートさせた、正統派シネフィル。世間の期待の高さも納得だ。

さてこの新作、出演者もかなり豪華。主人公のイスマエルを演じるのは、ルイ・ガレル。アート系映画監督フィリップ・ガレルの息子であり、大俳優ジャン・ピエール・レオーの後継者との呼び声が高い実力者。その恋人ジュリーには、フランス映画界でもすっかりお馴染みの若手女優、リュディヴィーヌ・サニエ。ジュリーの姉ジャンヌには、カトリーヌ・ドヌーヴの娘、キアラ・マストロヤンニ。まさに、フランス映画界の旬が、ぎゅっと詰まった作品なのだ。

Les chansons d'amour リュディヴィーヌ・サニエ、クロティルド・エスム、ルイ・ガレル
©Bac Films, Les chansons d’amour

ふとしたことがきっかけで、イスマエルとジュリーのカップルの間に、イスマエルの同僚アリスが入ってきて、3人組の奇妙な恋愛が始まる。3人で外出し、同じベッドに寝る。ジュリーの家族はこれを知ると眉をひそめ、「ずっとこうしてゆくつもり?」と訊ねる。「そのうち終わるわ」とのジュリーの回答はその直後、思わぬ形で事実となってしまう。驚くべきことは、そんないまどきなパリジャン達の恋愛模様が、なんとミュージカル仕立てで描かれているということ。

とはいっても、「ロシュフォールの恋人たち」や「ウエストサイド物語」のように、登場人物たちが常に歌って踊っているわけではない。台詞の一部がフレンチ・ポップスに置き換えられているという程度で、作品の娯楽性を盛り上げるために音楽が使われているというよりも、彼らの心理描写をシャンソンに託した、という感じ。なお、吹き替えではなく、俳優たちが自ら歌声を披露している。

Les chansons d'amour ルイ・ガレルとリュディヴィーヌ・サニエ
©Bac Films, Les chansons d’amour

舞台となるのは、パリ10区。インドカレー屋街として有名なパッサージュ・ブラディのそばに、ジュリーのアパートや、イスマエルとアリスの勤務する雑誌社がある。お洒落なパリジェンヌというよりもゴロツキのおじさんたちが多いこの地区が選ばれたのは、ひとえに映画館「ブラディ」のおかげかもしれない。冒頭のシーンから、ジュリーはこの映画館に並んでいる。実はここ、B級映画やハードコアを上映する、ちょっと癖のあるマニア向けの映画館(女性一人で行くのはおすすめしません)。こういう細かいところにも、オノレ監督のシネフィルっぷりがうかがえて、ついニンマリしてしまうこと請け合いの作品だ。

Les chansons d’amour【愛の歌】
2007年 フランス映画 100分
監督 : クリストフ・オノレ
出演 : ルイ・ガレル、リュディヴィーヌ・サニエ、キアラ・マストロヤンニ、クロティルド・エスム

by mayu on 2007-06-07 [シネマ]
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