パリから北西に約30キロ。オワーズ川(L’Oise)を望むオーベル・シュル・オワーズは、印象派の画家達に愛されたのどかな田舎町。
ドービニーを筆頭に、コロー、ドーミエ、1870年になると、ピサロ、セザンヌ、ルノワールらがこの町に移り住んできて、ガシェ医師宅に集うようになる。そして、最後に、心身共に病み疲れたゴッホが、この自然溢れる美しい町に姿を現す。1890年5月のことだった。
実際、ヴァンセント・ヴァン・ゴッホ(Vincent Van Gogh 仏語では、ヴァンサン・ヴァン・ゴークと発音される。)が、この地に住んだのは、わずか65日間。その間、彼は、この穏やかな田舎とその風景を、取り憑かれたかのように描き続けた。
しかし、貧困と、絶望、孤独が彼を苛み、1890年7月27日、城の裏手の麦畑でピストル自殺を図る。死に切れず、自室にたどり着き、2日後の7月29日早朝、彼の最もよき理解者であった弟テオドール(通称テオ)に見守られ、37歳の短い生涯を閉じたのである。
今日、この町の名が世界的なものになったのも、やはり、”ゴッホが生涯を終えた町である”ということに尽きる。
彼の描いた、このオーベル・シュル・オワーズの地は、今も当時とあまり変わることなく、我々の目の前に広がっている。
さて、のどかな駅に降り立ち、駅前を通るジェネラル・ドゴール通りを進んで行くと、ゴッホ公園と名付けられた小さな公園に、肩から画材を下げたゴッホの像(ザッキン作)が立つ。彼は、毎日この様な姿で出かけては、この町を描き続けたのであろう。
通りをはさんだ、その先には、彼の描いた「オーヴェールの町役場」が、そのままの姿で建っている。
その向かいが、ゴッホの下宿していた「オーヴェルジュ・ラヴー」。1992年、大掛かりな修復作業により、1890年当時の姿を取り戻したこのレストランでは、ゴッホを偲びながらトラディショナルな料理を楽しむことができる。
その先を右に曲がり、大きな門をくぐると、観光案内所と、ドービニー美術館が入るマノワ・デ・コロンビエール。
この観光案内所で、町の名所や、画家達の描いた場所(各場所には、その作品と、説明が添えられたパネルが立てられているので)が示されている地図をもらっておくとよい。(日本語あり)
「メゾン・ドゥ・ゴッホ」の入り口は、この向かい。
彼が住んでいたその部屋が当時の様に再現され、公開されている。
薄暗い階段を上がっていくと、小さな明かり取りの窓がある小さな部屋に、ぽつんと椅子が置かれている。
その隣の部屋には、パイプベッドと、洗面台・・・。あまりにも、簡素。
ここで、狂気と不安におののきながら作品製作に没頭し、最後には、ここで息を引き取ったのかと思うと、胸が締め付けられる思いである。
その先の部屋ではオーディオにより、彼のオーベル・シュル・オワーズでの想いが、弟テオ宛の手紙の中から語られる。”1日中、外で絵を描いていた。今も、部屋に戻って疲れで筆が落ちそうになりながら描いている。”等・・・。
何かに取り付かれ、時間を惜しむかのように描き続けた(実際、1日1枚半のペースで描いていたそうだ。)様子が目に浮かんでくるようである。
そこから、ゴッホの描いた「サンソンスの階段」を登り、右の方に進んでいくと、同じく彼の描いた「オーヴェールの教会」がたたずむ。彼の作品では、歪んで描かれているが、本物は、到って小さなローマ・ゴッシック様式の教会。
入り口は、この絵側の反対側にあるが、ミサの時間以外は、訪れる人もなくガランとしている。
さらに坂を登っていくと、ゴッホとテオが共に眠る共同墓地がある。塀際の緑の蔦に覆われた2つがそれ。
生涯を兄に尽くしたテオは、ゴッホの死後6ヶ月、兄の後を追うように亡くなっている。
その先に、ゴッホ最後の作品となった「カラスの舞う麦畑」が広がる。私が訪れたこの季節、麦は刈り取られてしまった後だったが・・・。生前、彼は何枚もここで作品を描いている。
ここから、西の方に向かうと、「ドービニーの家・アトリエ」があり、見学できるようになっている。そのまま、さらに、西の方へ進むと、城前のフランス式庭園が美しいオーヴェール城がそびえる。
場内は、「印象派博物館」となっており、オーディオビジュアルを使用した(日本語あり)「印象派への旅」を楽しむ事が出来る様になっている。ちなみに、ゴッホが自殺を図ったのは、この城の裏手であったと言われている。
さらに、Dr.ガシェ通りを進んでいくと、さすがに、観光客の姿は一気に減る。
ここの78番地にあるのが、ガシェ医師宅である。植物の咲き誇る庭を抜け、宅内に入る。
地上階には、印象派の画家達が集ったサロンが、当時のまま残されている。
1階は、医師と、ゴッホとにまつわるものが展示されている。ゴッホは、弟に宛てた手紙の中で、”彼は、親友のようであり、又、兄の様な存在。僕達は、どこか似たところがある。”と、ガシェ医師の事を語っていた。
さらに、がんばって、もう少し足を延ばしてみると、その先には、セザンヌの描いた「レミー通りの十字路」や、「首吊りの家」、ゴッホの「オーヴェールの家」、「グレの茅葺きの家」などが点在し、その面影を残している。
ゴッホがこの世を去って1世紀。しかし、このオーベル・シュル・オワーズは、今も、彼が描いた頃とほとんど姿を変えることなく存在している。彼を愛する方々には、是非、彼と同じ視点から、この美しい町を見て頂きたい。
【アクセス】
パリ北駅より、SNCF郊外線ポントワーズ(Pontoise)行き、 終点下車 (所要時間46分)
サンラザール駅より、SNCF郊外線ポントワーズ行き、 終点下車 (所要時間41分)
RER C線 ポントワーズ行き、 終点下車 (所要時間1時間12分)
ポントワーズから、在来線ペルザン・ボーモン クレイユ(Persan-Beaumont Creil)行き、オーベル・シュル・オワーズ(Auvers-sur-Oise)下車。所要時間12分 (昼間は本数が少ないので、あらかじめ確認した方が無難。)
【観光案内所】
rue de la Sansonne 95430 Auvers-sur-Oise
Tel : 01 30 36 10 06
開館 :
4~10月 9:30~12:30 14:00~18:00
11月~3月 9:30~12:30 14:00~17:00 (土・日・祝日 ~17:30)
閉館 : 月曜、1月1日、12月25日
www.auvers-sur-oise.com
Musée du Daubigny【ドービニー美術館】
rue de la Sansonne
Tel : 01 30 36 80 20
開館 :
4~10月 14:00~18:00 (土・日曜 10:30~13:00, 14:00~18:00)
11月~3月 14:00~17:00 (土・日曜 10:30~13:00, 14:00~17:30)
閉館 : 月・火曜
入場料 : 一般4ユーロ、学生2ユーロ、12歳以下 無料
www.musee-daubigny.com/
Maison de Van Gogh (Auberge Ravoux)【オーヴェルジュ・ラヴー】
52 rue du General de Gaulle
Tel : 01 30 36 60 60
開館 : 3月~10月 10:00~18:00
閉館 : 月・火曜日 11月~2月
入場料 : 一般5ユーロ、割引3ユーロ、 2歳以下 無料
Auberge Ravoux(レストラン)
Tel : 01 30 36 60 60
営業 : 12:00~15:00
定休日 : 月・火曜日 11:00~2:00
メニュー : 28ユーロ・35ユーロ
Maison du Dr. Gachet【ガシェ医師宅】
78 rue du Docteur Gachet
Tel : 01 30 36 81 27
開館 : 4月~10月 10:30~18:30
閉館 : 月・火曜日、11月~3月
入場料 : 一般4ユーロ、25歳以下3.5ユーロ
Château d’Auvers【印象派博物館】
rue de Lery
Tel : 01 34 48 48 45
開館 :
4月~9月 10:30~18:00 (土・日・祝日 10:30~18:30)
10月~3月 10:30~16:30 (土・日・祝日 10:30~17:30)
閉館 : 月曜日
入場料(オーディオガイド付き) : 一般11ユーロ、学生・6~18歳 7ユーロ
www.chateau-auvers.fr
Maison-Atelier de Daubigny【ドービニーの家・アトリエ】
61 rue Daubigny
Tel : 01 34 48 03 03
開館 : 4月上旬~11月1日 木~日曜 14:00~18:30
閉館 : 月・火・水曜日
入場料 : 5ユーロ、12歳以下無料
Musée de L’Absinthe【リカー博物館】
44 rue Alphonse Calle
Tel : 01 30 36 83 26
開館 :
6月~9月 水~日曜 13:30~18:00
10月~5月 土・日・祝日 11:00~18:00
入場料 : 一般4.5ユーロ、15~18歳3.8ユーロ、15歳以下無料
なお、11月からは 「メゾン・ドゥ・ゴッホ」を始め、幾つかの観光ポイントが冬季休館に入りますので、オーヴェル・シュル・オワーズへの観光は、3月以降をお薦めします。








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