今年のパルム・ドール 4 mois, 3 semaines, 2 jours
本年度のカンヌ映画祭、最高賞パルム・ドールに輝いたのがこの作品、『4 mois, 3 semaines, 2 jours(原題 : 4 luni, 3 saptamani si 2 zile)』。受賞から3ヶ月以上過ぎ、ようやくフランス公開となった。さてこの作品、ルーマニア人監督である、クリスチャン・ムンギウの手によるものだ。日本語にすると「4ヶ月、3週間、2日」といったような意味のタイトル。このカウントダウンのような印象さえ与えるこの言葉、ズバリ女性の妊娠期間を示唆している。そうこの作品のテーマは、堕胎である。
舞台は1987年のルーマニア。独裁者チャウシェスク夫妻が処刑され、共産主義政権が崩壊する1989年の少し前のことだ。大学寮でルームメイトのオティリアとガビータ。オティリアは金策に走り回っている。ガビータが孕んでしまった子供を、闇の堕胎屋に始末してもらうためだ。堕胎は逮捕に値する行為だから、慎重に進めなくてはいけない。しっかり者で世話焼きのオティリアに対し、当のガビータは人任せな上段取りが悪い、頼りないタイプ。そしてそんなガビータが発したデタラメが発端となり、ことはとんでもない方向へ動き始める。
カンヌ映画祭の歴代の受賞作品を振り返ってみれば、社会派の作品が多いことに気がつく。この作品も例に漏れず、教育省賞も別口で受賞している。しかしこの作品で興味深いのは、堕胎におけるモラル問題が、一切描かれていないこと。登場人物は「命を大切に」的な台詞を口にすることはなく、ヒロイン達も、ただただお腹の子供を「始末」することに必死になっている。だからこそ鮮やかに浮かび上がるのが、当時のルーマニアの社会情勢。手術のためのホテル予約も一筋縄でいかず、もちろん堕胎がばれれば、即逮捕。手術の危険をおいておいたとしても、まさに命懸けなのである。ヒロイン達にもセンチメンタルになっている余裕はないと思われる。
そして同時に、この作品はもっとユニバーサルなテーマ、「女の友情」を描いた映画としても秀逸である。頼りないガビータに振り回されつつも、結局は彼女のことが見捨てられないオティリア。ガビータのためならどんなことでもしてしまうオティリア。そんなオティリアの葛藤も、かなり我々の心に訴えてくるものがある。
あらゆる要素が複雑かつ巧みに絡み合ったこの作品。なんともいえない感情を抱いて映画館を後にすることになるのは、確かである。
4 mois, 3 semaines, 2 jours
【キャトル・モワ・トロワ・スメーヌ・ドゥ・ジュール】
2007年 ルーマニア作品 113分
原題 : 4 luni, 3 saptamani si 2 zil
監督 : クリスチャン・ムンギウ Cristian Mungiu
主演 : Anamaria Marinca, Laura Vasiliu, Vlad Ivanov
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